フランス南西部の郷土料理であるカスレをウリにしているフレンチ。
白インゲンに鴨肉コンフィやソーセージなどを投入する煮込み料理ですから、友里は家庭料理(せいぜいビストロ料理)だと思っていたのですが、この店、雰囲気(内装やメートルの出で立ち)はグランメゾンみたいなんですね。
アベノミクスの影響なのか今春1年ぶりの再訪で店内の盛況さ(昨年は他に1組しか居なかった)と共に驚いたのがその客層でありました。なんとほとんどの客が
老人、もとい、前期高齢者
だったのであります。見た目は70をとうに過ぎた男性が主体だったでしょうか。
個室は6名の男性グループ、ホールの5組も高齢者が主体でして、同伴カップルも年の差は優に50は離れておりました。
フレンチといいますと、一時期流行ったソースなしの軽い創作系もありますが、主体はソースたっぷりで重めの味付けを思い浮かべますから、老齢の方にはちょっと厳しいのではないか。しかしその心配は料理を一口食べて払拭されたのであります。(昨年の訪問では味の記憶が消滅しておりました)
この店の料理、見た目と違って優しいんですね。良く言えば上品、はっきり言えばインパクトなし。働き盛りの中年以下(特に壮年)の客が少ない、いや老人客が多い理由がわかったのであります。「老齢者向けの料理」を目指していると思われる調理だからです。
まずはロワール産の白アスパラ。1本1100円はちと高いと思いますが、ヴィネグレットソースも淡い、もとい、優しい味で悪くはなかった。
エスカルゴと豚足、チョリソーを使ったピペラード(2700円)もバスク地方の家庭料理で内装などにマッチしていないと思うのですが、これまたあっさりで老人に優しいお味。
しかし次の2皿には疑問が残ったのであります。
カナダ産のフレッシュだといわれたオマール(4400円)、冷製なのですが安い冷凍物のような質としか思えず不味い。連れが食べ残したものを味見しましたが、かなりレベルの低い代物でありました。
客単価アップを狙った和牛の暖炉焼き(1万3500円)は、脂(サシ)が多すぎて気持ちが悪く、肝心の肉の味がしない。
ホール内の暖炉での焼き上げをウリにしているのですから、この調理ならフランス産の赤身牛を用意するべきではないか。主要な客層である老人の体にも良いはずであります。
そして本日のメイン、カスレ(4300円)の登場です。
しかしこの家庭料理、食材(鴨コンフィやソーセージ)の原価はかなり安く上がるのではないか。質を気にしないからか肉の味が薄くこの料理も優しい(インパクトのない)味わいでありました。特に鴨コンフィ、味を濃縮する調理でよくここまで薄味に出来ると感心したのであります。
ワインの値付けは高く(ソムリエの抜栓技術も高いとは言えなかった)、見た目と違って薄味の料理。
皿出しも遅いだけに、資産をため込んでいる老齢のフレンチ初心者向けの高額フレンチ(料理自体は家庭料理)であると考えます。