デパ地下総菜に似た食後感が初心者には安心か、タツヤ・カワゴエ

昨年創刊されたばかりの月刊誌から連載の仕事を貰っていたのにあっという間の廃刊。
副業の収入がまた減ってしまったと嘆いていた友里に救いの神と言うのでしょうか。
新たに5月から月刊化される女性対象の雑誌からオファーが来たのであります。

読者が女性なだけに、いつもとは違う店選びをしなければならないと考えた結論が、賞味期限が切れかかっているとはいえまだまだマスコミ露出が絶えないイタリアン業界のプリンチペ、川越達也氏の店でありました。現在の建屋に移転してからは初めての訪問であります。

タツヤ・カワゴエ 入り口

 

ドアを開けて店内に入ってビックリ。狭い、暗い、暑い、の三重苦。特に最初に通された個室(2名用)は閉所恐怖症ではない人でも長時間の滞在は耐えられないのではないか。
でも他の席に変えてほしいと頼んで案内されたカウンター席、これまたビックリの構造だったのであります。

カウンターなのに個室状態。引き戸を開けて中に入るのですが、戸の枠が低く頭を屈めないと入れない。あの猪瀬知事でもそのままでは頭をぶつけてしまうほど不自然に低いんですね。
カウンター席の席間は余裕なだけに残念な構造でありました。

そして着席してから挨拶に来た安藤シェフ(川越さんはほとんど店にいないみたい)、遠目にはプリンチペにそっくり(茶髪で髪型似せるなど)でありました。

料理は7700円のお任せコース1本のみ。まずは一口野菜のバーニャカウダからスタートしました。

バーニャカウダの一口野菜

キュウリ、ブロッコリー、カリフラワー、赤カブなど種類は10種以上か。肝心のバーニャカウダはクリームっぽくニンニクやアンチョビのとがった味はしなかった。
この店は本場を知らない女性客対象の調理だとわかった瞬間であります。

トリュフのキッシュは薄いトリュフが乗せてありましたが、味を支えているのはトリュフオイル。でも初心者にはわかりやすい味なのでしょう。
続く白子のフェデリーニ、語源が「糸」の割にかなり太く感じました。これまた味濃く一般人にはウケるかも。

舟形マッシュルームを乗せた牛肉カルパッチョは、タタキみたいで甘めの味付けでありました。

牛肉カルパッチョ 舟形マッシュルーム乗せ

サーモンのコンフィも揚げた玉葱の千切りが添えていて味が濃い。リゾット「潮」と称するものは、ホタルイカをぶち込んでいるから味濃くなるのは当たり前。この段階で再びビールが恋しくなってしまいました。

リゾット 潮

 

鶏のローストの下にもカポナータとバジルソースが添えられているなど、食べ慣れていない女性客や業界人なら随喜の涙を流すであろう濃い味調理のオンパレードであったのです。

鶏のロースト

 

7700円という値付けも絶妙でこれならある種の客層(ミーハー客)で人気が継続するのは仕方がないことか。
取材に同行した連れは、「デパ地下総菜のような味でわかりやすい」と評しておりましたこと、最後に付け加えさせていただきます。

 

あくまで近所の方限定の自称イタリアン、ヴィノテカ キムラ

幻冬舎の編集者たち、自社の代表(見城徹氏)を「賢人」と月刊ゲーテで紹介するなどその愛社精神(ゴマスリ精神)抜群なところにいつも感心している友里。
その見城社長と共に三賢人の一人として祭り上げられていた小山薫堂さんが

熱気があってお手頃だけど仕事はきっちり
大切に通っていきたい

と紹介していた街場のカウンターイタリアンがこの白金高輪(地番は三田)にある「ヴィノテカ キムラ」。

丁寧な仕事で手抜きがない(要約)

とも絶賛していたので、給料日前で懐が厳しかった時期に友里は訪問を試みたのであります。
ほとんど飛び込み状態での電話でしたがあさり予約オッケー。でも店の指定時刻が40分後だったのが何とも不思議でありました。
あの食後感でなぜかいつも賑わっているサルヴァトーレを左手に見て左折した右側にある路地裏の小さな店。入店してなぜ時刻指定をしてきたか理解したのであります。

ヴィノテカ キムラ 入り口

調理人(シェフ一人)の段取りの問題で満席状態では対応できないのではないか。着席して数十分、他の客への皿出しを見て導いた結論であります。

コペルトとして一人250円の請求があるのは廉価なイタリアンでは仕方ないこと。
でも前菜が1000円台半ば、パスタも1600円以上、メインに至ってはトリッパ以外が2000円台後半と、小山さんが言っている「手頃」とはかなり掛け離れた値付けではないか。
金儲けしすぎて最近では京都の老舗料までを傘下に収めてしまった放送作家の金銭感覚が理解できない一般客・友里であります。

まず初回に頼んだのはスティック野菜(バーニャカウダ風1800円)。

スティック野菜 アンチョビクリームフォンデュ

結構塩が強くて悪くはないのですが、クリームっぽすぎる。(本来はクリームではなくオイルでのエマルジョン)もう少しオイルとニンニクを入れた方が、飽きが来ないのではないか。

ウリの生ウニとバジリコのトマトソーススパゲッティ(1800円)は、トマトベースのクリームが強すぎで、ウニやバジルの風味を蹴飛ばしておりました。

生ウニとバジリコのトマトソーススパ

麺も火の入れ過ぎで「ナイデンテ」状態。でも街場のイタリアンなら価格を考えなければ許容範囲かもしれません。

トリッパのパルメザン掛けグラタン(1600円)はトリッパ特有の風味(臭み)はあったがこれまたクリームの多用で緩いというか辛さが足りなかった。

トリッパのパルマザン掛けグラタン

6300円のボトルワインが利いたのか、一人だったけど支払いは1万4000円弱と、小山さんと違って友里にはまったく「お手頃」と感じない支払額であったのです。

確認のため2名で再訪しましたが、パスタとメインを一皿ずつに抑えても支払いは2名で2万円弱とこれまた下手なリストランテも顔負けの支払い額。パスタのナイデンテ状態も変わりなしでした。

結論は、近所の方のみでしかも前菜とパスタにグラスワインだけのチョイ食べ&チョイ飲み限定。この条件なら、話のタネに訪問可であると考えます。

 

関西江戸前よりレベル高の博多鮨をまた見つけた、安春計

関西の自称江戸前鮨にまともでCP良い店なし

大阪や神戸の地元民から支持されている有名店をいくつも訪問して友里がたどり着いた定説であります。

お江戸での修業歴がないどころか、寿司屋で修業をしていないまったくの自称職人まで崇めまくって通い続けている地元関西人。
中には月に1回だけ(しかも期間も限定的)上野毛にあった3つ星(あら輝)に通ったことをウリにしている職人が京都に流れて行きましたが、そんな自己流自称鮨職人が生息し続けることが出来る関西、味濃すぎの和食だけではなく寿司に関してもホント、

寛容な地

であります。

そういえば集客に苦労した銀座の元会員制寿司職人も、週末(土日だけ)に北新地で出稼ぎ営業しておりましたっけ。既に東京へ逃げ帰っているそうですが、出店中は真の江戸前鮨を知らない関西セレブには人気があったとか。
本物を知らない関西人、その懐の広さに友里脱帽であります。

そんな関西のなんちゃって江戸前寿司と違って、九州産のタネを重用するなど純粋な江戸前とは違いますが友里がCPよいと評価するのが「博多鮨」であります。
このコラムでも、「安吉」や「近松」を取り上げましたが、今年はじめの博多訪問で、もう一軒関西寿司より高レベルの店を見つけたのがこの「安春計(あすけ)」であります。

螳画丼險・

「安吉」の翌日に同じく芦屋から駆けつけた食べ仲間との訪問です。

まずは牡蠣の山椒煮。悪くはなかったけど次に出たノレソレはそれに増して美味しかった。
ヨコワ、ヒラメ(鹿児島)とちと友里の好みと違う刺身の後、大分の赤貝の香り含めた味わいの良さに印象はV字回復。

でかいアワビの後の余市のアン肝は今まで食べた中でもトップに近いと思うほど美味しかった。

菴吝クゅ・繧「繝ウ閧拿

柚子風味の昆布〆フグに疑問をもち、蝦夷馬糞ウニの醪和えは醪が強すぎて久々にペケ。
でもツマミ最後の蕪の炊き合わせ(スッポン出汁)でまた印象は良くなったのであります。

酢飯は新津鮨の継承(きよ田で主人は働いていたとか)で当然ながら砂糖添加はなし。
アラ、コハダ、スミイカ、煮ハマなど九州産のタネが主体の握りは、「安吉」より大きめで結構お腹がふくれてしまいました。

関西(それより以西でも)でまったく東京が敵わないと思うのがヒラメやカレイの除いた白身、特に鯛であります。
最近は橋の影響で潮流が変わってしまった淡路産より豊後水道ものを重用されるようですが、この店では鯛を春秋の短い期間しか使わないとか。
ヒラメを重用しているとのことですが、このタネなら関東ものでも十分対抗できると考えるだけに、ちょっともったいない気がしてしまいました。

店内には昔の「きよ田」での新津さんと主人のツーショット写真のアルバムもありました。
現「きよ田」にもいる名物女性の若き頃の写真も楽しめた。

シャンパンを持ち込みビールに日本酒を追加しての支払いが一人1万5000円前後とCPも良すぎ。
この支払いでこの食後感は、「博多鮨侮るなかれ」でありました。