不要なサシが入ってなくても最後はしつこかった、くいしんぼー山中

あれは今年はじめの京都訪問でありましたか。和食が続いて飽きがきたので、何か変化球を入れようとネットでネタ探しを兼ねて見つけたのがこのステーキ店。

くいしんぼー山中

 

昼でしたがコースではなく単品でと頼んだのは人気のハンバーグランチ(2900円)と100gヒレ(9450円)。かなり強気な値付けに驚いたのであります。

まずは小さなベークドポテト。

ベイクドポテト

 

そして本日のスープのポタージュは味濃いビーフ味でありました。

ビーフ味のポタージュ

 

メインのハンバーグ。

ハンバーグ

人気があって注文が多いからか造り置きでして、ドーナツ状に真ん中を抜いた面白い形状。その穴の開いたところに玉子があるのがレトロ感(ローカル感)を演出しておりました。

そしてヒレステーキの登場です。

ヒレステーキ

 

調理は友里が好まない鉄板焼きでありましたが、主人が「A欠牛」ではないと自慢するだけに、他店の鉄板焼きのヒレ肉よりは脂が少なく食べやすかった。
主人によりますと、この牛なら(サシに弱い人でも)サーロインも食べられるはずだとの発言に再訪を決意して店を後にしたのであります。

ここで店主がいうA欠牛に関して簡単に説明しますと、成長の過程でビタミンAを不足させサシが入りやすくする肥育方のことであります。

なかなか機会がなかったのですがやっと再訪を果たせたのは半年以上経ったこの夏でありました。今回はディナーを予約。

同伴者とロース(15,750円)とヒレ(18,900円)のコースを選択。
ベークドポテトはランチと同じでしたがこの日のスープは冷製コンソメ。

冷製コンソメ

これはホント美味しかった。正統派のコンソメを久々に食べたと非常に満足しました。

前菜は自家製ローストビーフ。

ローストビーフ

ヒレとロースの両方の提供でしてこれはまずまずという感じ。

続くはかなり大きな鱧(ブールブランソース)でありました。

ステーキ屋で鱧、しかもブールブランソースは意外でありましたが、国産という鱧、大きくてそれなりに美味しかった。

そしていよいよリブロース&ヒレの登場です。

リブロースとヒレ 小豆色リブロースとヒレ

鉄板で焼いたリブロースとヒレ、確かに最初は脂がしつこくなくそれなりに美味しかった。でも食べ進むうちに、やはり脂が気になってくるんですね。このA欠でないという和牛、アンガス牛など赤身牛と比べるとやはりサシの量は多かったのであります。

〆には肉をバンバン入れまくっていたガーリックライス。

ガーリックライス

これがトドメでお腹は完全に一杯になってしまいました。肉の量的にはそんなにグラム数を食べていなかったのですが…。

確かにそこらの脂たっぷりの和牛に比べると脂の入りが優しい肉質。京都駅からかなり遠いこと、決して安い店ではないこと、赤身ではなくそれなりの脂が乗っていること、などを理解するならば、話のタネでの訪問は可であると考えます。

でもせっかく他店と異なる牛を提供するのですから、店主もその良さを認める「炭火焼き」に特化した方が、肉好きや外食好きの興味を引いてより盛況になるのではないかと友里は考えます。

 

行けば行くほど食後感が落ちてしまった、エスキス

日本広しといえども料理評論家やフードコラムニスト、フードライターの中でレストランの経営母体を評価の対象にするは友里征耶ただ一人。
3つ星和食「小十」の姉妹店である「奥田」とそのパリ店、そしてこの「エスキス」は「メディカルスキャニング」という、医家向けの画像検査・診断専門の施設ネットワークを展開する会社がスポンサードをしております。

あくまで友里の想像ですが、メディカルスキャニングにとってお客であるクリニック(患者を回してもらうのがこの会社の主要ビジネスの1つ)の理事長などの接待にも使っているのではないか。医者はワイン好き、外食好きが多いからであります。

友里の初訪問は今年はじめ。福臨門など高額店が入っている銀座ビルの9階でエレベーターを降りて友里は焦ったというか目を疑ったのであります。
目の前にあるレセプションやホワイエ、まるでバリ(行ったことないですが)のスパみたいなんですね。レセプショニストの服装も、フレンチとはかけ離れた限りなくスパ要員みたいなもの。一瞬フロアを間違えたかと思ってしまった。この変わった趣味、スポンサーの嗜好なんでしょうか。

この店はコース2本オンリーでアラカルトはありません。グランメゾンでアラカルトがないのは、友里の評価としてまず大きなマイナス。
1万8000円と2万3000円という、アベノミクス効果が出ていない時期でも強気の価格設定に驚きながらも、2万3000円コースをオーダーしたのであります。

そして初回の結論。シェフはハーブを多用し香りや色あい、そして盛りつけの美しさを最重要視しているようで友里の嗜好には合わなかったけど、連れの女性達にはかなりの好評。
そこでその後2回も確認のため訪問する羽目になってしまった。なぜなら2回目でかなり食後感が落ちたと感じてしまい再度確認しなければならなくなったからであります。
それでは今秋オープンする「ロオジエ」の出来如何によっては、最後の訪問となるかもしれない今夏の料理(最高値コース)について述べてみます。

一口アミューズはイカスミの練り込んだ生地にトマトと烏賊が入っているもの。

一口アミューズ

 

アミューズは山羊のミルク、チェリーのジュレにキャビア添え。

アミューズ

 

結論から言わせていただくとこの日良かったのはこの2皿だけでありました。

続くバナナ、カボチャ、ムール貝の泡仕立ては塩を強くしてもバナナの甘みが気になり過ぎる。

バナナ、カボチャ、ムール貝の泡仕立て

 

 

鮎 の開き(頭は別添え)はスカンポソースで、昆布でマリネした金時草を下に敷いているのですが、鮎をわざわざフレンチで食べたい客がいるのだろうか。

 

その他、ハタ、赤座エビ、鳩とアイテムだけは揃っていましたが、更に調理に奇抜さ(甘さや過剰な香り)が目立ってきてしまっていたのであります。

ハタ

 

同業者(オテル・ド・ヨシノの手島純也シェフ)からも堂々と「感覚的には無しな甘さの連続」と批判されたエスキス。
土曜だというのに空席が目立っただけに、「ロオジエ」がオープンしたらどうなるのか、メディカルスキャニングによる立て直しが必要かもしれません。

京都在住人に薄味だと紹介された濃い味料理店、京夕け 善哉

この友里にちょっと絡んできた京都在住のブロガーから「薄味の京料理」と紹介された店。
昼も夜も料理のレベルは(コース価格も)同じという話だったので昼に訪問。5750円、8050円、1万1500円の3コースから最高値を選択しました。
同行した京都の飲食業界に詳しい連れは、主人が「鳥居本」出身だから薄味ではないはずと言ったのですが・・・

善哉

まずは海鼠腸の茶碗蒸し。海鼠腸茶碗蒸し

大味好きの魯山人が好んだ海鼠腸が初っぱなから出てきた段階で友里、この店は薄味ではないと判断したのであります。
最初の一皿目より続く皿が薄味ならば物足りなくなってしまうからです。茶碗蒸しの出汁もいわゆる万人ウケするしっかりした濃い味で、海鼠腸の後押しもあり塩気も強い。旨みと塩気のダブル攻撃でありました。

八寸はこの価格帯だから仕方がないのか、ちょっと貧弱。花山椒、百合根、モロコ(タレ付け焼き)、コゴミの胡麻和え、ホタルイカの黄身酢和えなど味は予想の範疇内、と言いますかやっぱり味濃いツマミばかりではないか。

八寸

お椀のタネは蟹真丈とヨモギ真丈を合わせた菱餅もどきに白魚をのせたもの。吸い地を口に含んで「かなり濃いんじゃないか」。しかも味醂を使用しているかのように、かな~り甘く感じるんですね。これは鰹節ではないはずと連れが確認したらマグロ節使用とのことでありました。友里のイメージからすると、かなりかけ離れた「薄味」であります。

お椀

 

造りは鮪、鯛、ハリイカ(関東ではコウイカ)、赤貝。こちらは予想に反してまずまずの質。特に鮪、京都というか関西でまともなものに出合ったことがほとんどないのですが、これは悪くなかった。

造り

 

そして友里が好きな炊き合わせの登場です。イイダコ、筍、海老芋でありましたが、出汁の味は濃い(しかもかな~り甘い)けど肝心の海老芋に味が染み込んではいなかった。

タケノコ タコ

 

焼き物は若狭のグジなのですがなんと唐墨をまぶしておりました。塩気とうま味を加えすぎの足し算調理ではありませんか。

グジ

 

〆のご飯の前に出てきたのは、三宝柑の蒸し寿司と蛤の潮汁。潮汁は味濃い割に蛤の味をそれほど感じなかったのが残念。

三宝柑の蒸し寿司

 

蛤の潮汁

 

そして〆は鯛飯であります。驚いたことに、この鯛飯は友里にとって薄味と言いますか、鯛の強いインパクトを感じませんでした。

鯛飯

 

量は十分だし、食材の質も価格なりといいますか、東京基準ではCPが良い方だと思われる店。
女将の接客も良かったのですが、友里の基準ではこれは薄味料理ではない。

CPが悪くない最近よくある味付け(早い話が濃い味)の京風料理と紹介されていたら、友里の評価はもう少し違っていたかもしれません。