行けば行くほど食後感が落ちてしまった、エスキス

日本広しといえども料理評論家やフードコラムニスト、フードライターの中でレストランの経営母体を評価の対象にするは友里征耶ただ一人。
3つ星和食「小十」の姉妹店である「奥田」とそのパリ店、そしてこの「エスキス」は「メディカルスキャニング」という、医家向けの画像検査・診断専門の施設ネットワークを展開する会社がスポンサードをしております。

あくまで友里の想像ですが、メディカルスキャニングにとってお客であるクリニック(患者を回してもらうのがこの会社の主要ビジネスの1つ)の理事長などの接待にも使っているのではないか。医者はワイン好き、外食好きが多いからであります。

友里の初訪問は今年はじめ。福臨門など高額店が入っている銀座ビルの9階でエレベーターを降りて友里は焦ったというか目を疑ったのであります。
目の前にあるレセプションやホワイエ、まるでバリ(行ったことないですが)のスパみたいなんですね。レセプショニストの服装も、フレンチとはかけ離れた限りなくスパ要員みたいなもの。一瞬フロアを間違えたかと思ってしまった。この変わった趣味、スポンサーの嗜好なんでしょうか。

この店はコース2本オンリーでアラカルトはありません。グランメゾンでアラカルトがないのは、友里の評価としてまず大きなマイナス。
1万8000円と2万3000円という、アベノミクス効果が出ていない時期でも強気の価格設定に驚きながらも、2万3000円コースをオーダーしたのであります。

そして初回の結論。シェフはハーブを多用し香りや色あい、そして盛りつけの美しさを最重要視しているようで友里の嗜好には合わなかったけど、連れの女性達にはかなりの好評。
そこでその後2回も確認のため訪問する羽目になってしまった。なぜなら2回目でかなり食後感が落ちたと感じてしまい再度確認しなければならなくなったからであります。
それでは今秋オープンする「ロオジエ」の出来如何によっては、最後の訪問となるかもしれない今夏の料理(最高値コース)について述べてみます。

一口アミューズはイカスミの練り込んだ生地にトマトと烏賊が入っているもの。

一口アミューズ

 

アミューズは山羊のミルク、チェリーのジュレにキャビア添え。

アミューズ

 

結論から言わせていただくとこの日良かったのはこの2皿だけでありました。

続くバナナ、カボチャ、ムール貝の泡仕立ては塩を強くしてもバナナの甘みが気になり過ぎる。

バナナ、カボチャ、ムール貝の泡仕立て

 

 

鮎 の開き(頭は別添え)はスカンポソースで、昆布でマリネした金時草を下に敷いているのですが、鮎をわざわざフレンチで食べたい客がいるのだろうか。

 

その他、ハタ、赤座エビ、鳩とアイテムだけは揃っていましたが、更に調理に奇抜さ(甘さや過剰な香り)が目立ってきてしまっていたのであります。

ハタ

 

同業者(オテル・ド・ヨシノの手島純也シェフ)からも堂々と「感覚的には無しな甘さの連続」と批判されたエスキス。
土曜だというのに空席が目立っただけに、「ロオジエ」がオープンしたらどうなるのか、メディカルスキャニングによる立て直しが必要かもしれません。