年中無休と予約の取り易さだけがウリではない、すし家 一柳

バブル期に鳴り物入りで登場したホテル西洋銀座。日本初のコンシェルジュやバトラーサービスをウリにした小キャパなラグジュアリーホテルでありました。
友里も独身時代、バスルームでTVを見ることが出来るなどその豪華な設備に驚いたものでした。

しかし盛者必衰のなんとかのごとく、セゾングループの凋落と共に埋没感が日増しに高まっての昨年半ばの閉館。その末期のホテルに2009年にオープンしたのがこの店の前身である「真魚」でありました。

この店の経営は高級外車を乗り回し億を超える年収だと噂される店主が率いる高額鮨チェーン店。
あの赤坂の3つ星鮨屋も昨年末まで離脱できなかったという締め付けの強いグループでありますが、「真魚」は市川海老蔵がプロデュースしたことがかえって胡散臭いイメージを与えたからか、予約困難となるようなブレイクには至らなかった。

逆に予約の取りやすさや年中無休(年末年始も)の使い勝手から、友里はたまに利用していたのであります。
予約が困難なグループ内の3つ星鮨屋(昨年末まで)に勝るとも劣らないツマミと握りと評価したからでもあります。その予約簡単な鮨屋が、ホテルの閉館と共に同じ銀座1丁目の地に移転して昨年6月に再スタートしたのがこの「すし家 一柳」でありました。
店名は店主の苗字だとか。締め付け厳しいチェーン店からの完全離脱ではないと漏れ聞いておりますが、年中無休と予約の取り易さという面での使い勝手の良さも変わりがないのが有り難かった。

最初の訪問はオープンした当月。10名のカウンターの他、無理に造った個室が使いにくそう。鮨屋で個室を求めるのは粋でないだけに、この個室は避けた方が良いでしょう。

この店の特徴はツマミの豊富さ。
白身などの刺身も出てきますが、白子や太刀魚、キンメの焼き物、そしていつも納得のアン肝などそのツマミの数は10種以上か。最後まで行ったことはありませんが、粘れば15種以上出してくるのではないでしょうか。
酒飲みには有り難い豊富なツマミ群でありますが、肝心の握りを食べる余裕がなくなる可能性がありますから注意が必要です。

肝心の握りについても書かなければなりません。いつも多くのツマミを頬張って飲み過ぎるので後半の記憶が飛んでしまうのですが、酢飯はよく言えば控えめで飽きが来ない一般ウケするもの。はっきり言うと個性はないかもしれません。
しかし光りものの〆ものや、蛤、穴子などの煮物など江戸前仕事のタネも揃えているなど引き出しが多い鮨屋。

ツマミと握りをお任せで頼んで日本酒で通したら一人あたりの支払いは多くても2万円台半ば。
日本酒ではなくシャンパンなどワインを飲んだら3万円を突破するかもしれませんが、銀座鮨としてはタネ質、そして食後感と充分満足するレベルであると考えます。
ただし、はじめて頼んだオミヤの太巻きにはチョイ疑問。わざわざ頼まなくて良いレベルかもしれません。

 

台湾現地人が食べなかった台湾料理、明福台菜海産

台北最後の夜に訪問したこのお店、台湾在住の一家との会食だったのですが、彼らもこの店構えを見て入店を一瞬躊躇したという、どこに出しても恥ずかしくないディープな店構えと料理の店であります。

 

店内も狭くて決して綺麗とは言えないのですが、驚いたのが奥にあるドア。

 

このドアの向こうに厨房があるので料理はここを通って運ばれてくるのですが、何とトイレもこのドアのすぐ後ろ。つまりトイレ客と料理が同じドアを通ってくるのであります。衛生的にいかがなものか。

料理は台湾現地人の奥方(大陸出身)の好みで、ディープな台湾料理のオンパレードとなりました。
まずは台湾の山菜炒め。ジャコとニンニクで炒めたものでして、野菜好き(山菜好き)の友里には良かった。続くは台湾のアサリ料理でして生姜、ニンニク、唐辛子に台湾ハーブで味付けしたもの。ここまでは良かったのですが、次からがちょっと引いてしまう料理の連続となったのです。

出てきた料理、なんと豚の腎臓ではありませんか。

 

胡麻、古い生姜、米酒などで味付けした、台湾では高級料理だとのことでしたが、根っからの台湾人のご主人が箸をつけなかったのですから笑っちゃいました。確かに臭みはなく食べられましたが友里、お替わりはしませんでした。

次もかなりディープな一皿。これまた生姜、豆板醤で使う豆(ソラマメ)、そして中国酢で味付けした豚の大腸(料理名わからず)で、味はかなり酸っぱい。

 
酸っぱいもの好きの友里ですがこれが例外。お替わりは出来ませんでした。(台湾のご主人はまた箸をつけなかった)。

そして事前に予約していた佛跳牆(ファッティウチョン 通称・ぶっ飛びスープ。高級食材の乾物を多用した壷で煮込んだ高級スープ)の登場です。

 

福臨門(東京)や香港などで今まで3回ほどこの料理を食べたことがあるのですが、台湾のぶっ飛びスープはちょっと違うかも。フカヒレ、干し貝柱、干しアワビなどはありましたが、白子や筍、そしてクワイに豚肉と高級食材とは縁遠いものがゴロゴロしていたのであります。

 

香港では6人分で10万円ほど請求されましたが、今回は5人分くらいでなんと1万円前後、ちょっとおかしいとは思っていたのですが…。
お味は価格なりでありまして、まったく高級感が出ていなかった庶民的なぶっ飛びスープであったのです。

お次は李登輝が好んで食べたという(入り口には彼の写真が貼ってあった)桂花フカヒレ炒め。台風の影響で品薄と聞いていた香菜がタップリでまずまず満足。

しかし最後の一皿にまた引いてしまったのであります。

 

バージン蟹というものだそうで、おこわみたいなものの上にちょっとグロ的に蟹が盛り付けてあるんですね。これは箸をつけず遠慮してしまった。

これが本場の台湾料理というものなのか。
それにしては、正真正銘の台湾人がほとんど手をつけていなかったのが不思議な、滅多に経験できない台北でのディナーでありました。

東坡肉が高額店のウリ料理になっている、天香楼

台湾では珍しい杭州料理とのふれこみの高額店。
東坡肉(皮付き豚バラ肉の煮込み)が有名と言われておりますが、日本では居酒屋メニューにもありそうなこの料理が高額店の看板になるとは友里ビックリ。己の知識(経験)のなさを思い知ったのですが、大陸に行ったことがないので杭州料理がなんたるかはまったくわかっておりませんから当たり前ですね。

この店は台北のランディス台北ホテルの地下にありまして、大箱でありますが内装など普請は結構高そう。入り口もゴージャスです。


 

我々は15人ほどのグループだったので2卓に分かれ、1500NT$(ニュー台湾ドル 当時1NT$≒3.33円)のコースに加えて、富貴土鶏(鶏の泥土包み焼き)を事前予約しての訪問でありました。

まずは東坡肉と並んで看板料理の龍井蝦仁(川海老の龍井茶炒め)。
黒酢がかかっていてお茶の香りはそれほど強く感じなかった。というか、肝心の海老がぬるかったのは誠に残念。

続いて杭州名物魚のとろみスープの登場です。台湾の料理は濃厚味だと思っていたのですが、杭州料理はこの皿だけではなく出てきた料理すべてが予想外に薄味でありました。椎茸、グリーンピース、白身魚が入ったお粥のようなもので淡い味付け。

唯一味が濃いめだったのが鶏モモを揚げてから醤油と砂糖で味付をしたような料理(料理名失念)。これはかなり甘かった。
このあとに本日の主役、富貴土鶏の登場です。

 

選ばれた客が固まった泥を木槌で割ってから、スタッフが蓮の葉などを開いて鶏肉をサーブしてくれます。
蓮と泥の間には、セロファンのようなもの(餅の紙みたいなものだとの説明)がありました。椎茸や玉葱がしっかり効いていて、このテーブル前でのパフォーマンスの影響もありこれは美味しく感じました。その昔、今はなき新橋の翠園酒家で何回も食べたことがありますが、まさか台湾で遭遇できるとは思ってもいなかった。

 

続く豆腐とホタテの煮込みは再び薄味へ導かれましたが、この料理だけイマイチだったのが鯉の黒酢煮。処理が甘かったのか質が悪いのか、鯉の臭みが抜けておらず食べにくかった。

そしてもう1つの看板料理、天香楼東坡肉がご飯と共に登場しました。八角を効かせてありますが、色の割に味は薄めで日本の街場中華のそれとは段違い。かなり良かったです。


 

このほかデザートが2皿出てコースは終了。ワインの値付けが高い(NVシャンパンが1万円台半ば)のが残念でしたが、イメージする台湾料理と異なる上品な料理の連続。
ディープな台湾料理の合間には、こんな料理を挟むのも一考であると考えます。