経験が少ない若手職人の高額鮨屋、青木西麻布

高いから客が来ないのか、客が来ないから高いのか、銀座の過大評価人気店「鮨 青木」が西麻布に支店を出したのが2007年の11月。主人の青木氏を中心に組織された?「チーム青木」の西麻布出店計画を宣伝していた「東京カレンダー」を読んで私は違和感を持ったのです。「主人以外にまともな握り手が居たのかよ」。銀座本店で昼夜に関係なく、「お任せ」や「お好み」を頼む客や常連客に対応しているのが主人の青木氏。小上がりの団体や安い「お決まり」を担当する2番手職人は常連客や口うるさい客の洗礼を受けていないのです。しかもついこの間まで2番手を張っていたのが、2005年に独立した関内「鮨 はま田」の浜田氏。つまり、青木の2番手は2007年当時「お決まり」とは言え客前で握った経験は2年足らず。「チーム青木」と言ったって、はっきり言えば「小僧さん」だけではないか。
果たして経験不足の若手に任せて高額鮨屋が成り立つのかと年明けの2008年昼に訪問して、客入りの悪さを確認したのです。
西麻布3丁目の地下1階、地上3階建ての立派なビルの1階部分。地下には青木氏が誘ったという「鮨 野じま」があり、階上に青木氏の自宅があると聞きました。カウンターは何と大小2つあるのに客は私を入れてわずか2組。タネの仕入れや仕事は本店が担当すると若い衆が言っていたとおり、タネ質や仕事に変わりはありません。ただし握りが問題。経験不足の若手の典型的なパターンというのか、自信なく出してくる握りはタネの大きさの割に酢飯が小さくバランスが悪い。ツマミ2種に握りが14ケ、ビールにぬる燗少々での支払いが2万円弱とCPの悪さを感じたのです。
再訪を控えていたのですが、2009年版ミシュランで本店共々1つ星を獲得したと聞いて直後の夜に再訪。ミシュラン効果で満席かとの推測は大はずれで何と客はほとんど居ませんでした。
ツマミと相変わらずバランス悪い握りに酒類を頼んでの支払いが3万6000円超。あの「宮葉」と同レベルの請求に開いた口がふさがらなかった。客が少ないのはCP悪すぎるので当たり前であります。その後訪問した昼も客はわずか1組。最高額鮨屋の支払いながらCPがかなり悪い過大評価鮨店であります。

日本一、世の中で一番、と能書きが多い、キャンドル

自称料理評論家の山本益博氏が大絶賛していた銀座の洋食屋。50年以上続く老舗なのはわかりますが、当時通いつめた文化人はじめ著名人のサインを未だに飾っているのは、友里的に言わせていただくとノーセンス。作家はじめ文化人と称する人に味のわかる人は希有だからです。
最近はそれほど癒着、もとい昵懇さをアピールしていませんが、この間まではマスヒロさんがぴったり張り付いておりました。食事会にも利用していたようで、私も月刊誌の主催するマスヒロ食事会(キャンドル)に参加したことがあります。アルコール1杯が付いているとはいえ出てきた料理を考えると会費は割高。個人で入店した方が安く上がる計算になりました。マスヒロさんだけではなく、出版社の事務方も食べていましたから、彼らの食事代やその他の経費も含入されていたようです。その後の訪問は昨年末でありました。
「日本一と呼び声高い」と自称する三陸産の生牡蠣(695円)。確かに悪くないけどこのレベルは他の店でも味わえる質。
「元祖!世の中で一番美味しいと言われている」チキンバスケット(1470円)は、ただ柔らかいだけで、肝心の鶏肉の旨みを感じず衣の味でカバーしております。店内はほとんどが若い女性のグループですが、鰻と同じでこの客層はただ「柔らかいだけ」で評価を上げる傾向があるようです。「1950年の海老マカロニグラタン」(1470円)も単なる昔味のグラタンではっきり言えば何の変哲もない。「栃木県産霧降高原牛」のビーフシチュー(2940円)も濃い味ながら深みなくこれまた「能書き倒れ」と考えます。能書きのない料理もイマイチ。「アンチョビinオリーヴピザ」は肝心のアンチョビの味がしなかった。
ヴィンテージ表記のないワインリストは最高が2万円弱とこの料理には不釣り合いなワインが多い。ハウスワイン(グラス730円、カラフ2185円)で充分です。
無愛想で態度の良くない男性ホールスタッフ、喫煙可の店内、テーブル間が近すぎるのをごまかすため隣客との間に変な衝立で仕切るのもかえって閉塞感を増さないか。
日本一、世の中一番、そして山本益博氏絶賛というキャッチに釣られてわざわざ行く店ではない普通の洋食屋であります。

移転直前の訪問で支払額の記録を更新、あら皮

ビル建て替えで他の飲食店が次々と閉店する中、最後まで頑張ったのがステーキでは客単価日本一と言われる「あら皮」です。炉窯や換気設備の問題からかなかなか場所が見つからず、昨年末まで粘ってやっと今年はじめに御成門近くに移転すると聞き、年末に仲間2名と最後の訪問を決行したのです。
2008年としては2回目の訪問。拙著「ガチミシュラン」の取材で訪れた前回の支払いが、安いワインに抑えても一人当たり9万円弱。リーマンショックの前でも懐への打撃は相当なものがあり再訪はもうないと誓った友里。未曾有の経済危機の中で、「移転直前に行ってみよう」と知人の提案にすぐ乗ったのがいけなかった。更に9万円強の支払いで倹約の正月を迎えることとなりました。
当日はいかにもといった同伴グループ客の他は我々をいれてホールは疎ら。やはり接待客に特化した営業方針では、100年に一度の不況は厳しいものがあるようです。
前回はコース(5万円)に追加を頼んだのが高額支払いにつながったと分析、今回は単品注文に徹しました。まずはグラスシャンパンで乾杯をと思ったら、グラス対応はしていないとのこと。フルボトル並みの値付けに驚きながらもハーフ(9000円)をオーダーした次第です。ツマミとして頼んだ燻製鴨は2500円と思ったより安めでまずまず。オススメの寒ブリ備長炭焼き(1万円)は3名でシェアできて旨い。サラダ(800円)を頼んでここで普通のロースを頼んでいれば良かったのですが、年末恒例のチャンピオン牛があると言われて飛びついたのがいけなかった。明細では3名で13万5000円、一人当たり4万5000円のロース、それは美味しいものでしたがこんな時期に食べていいのでしょうか。3名だと強気になって2万円の白ワインと4万円弱の赤ワイン(これでも安めのワインを選択)を頼んでの支払いが総計で27万円超になったのです。単品で節約したつもりが前回を上回る客単価に唖然。明細を見ると、パン・バターに300円、ステーキに添えられた温野菜に500円の請求が明記されていました。客単価が5万円以上の超高額店にしてはあまりに細かすぎないか。この店は経費でなければ訪問できないことを再確認したクリスマスシーズンの夜でした。