熊本の観光客には満足の馬肉店、菅乃屋上通店

前夜の高額天麩羅で失敗した友里、抑えとして昼に予約していたのがこの馬肉店であります。店内はオープンキッチンのカウンターの他、ラブチェアのカウンター、そして掘り炬燵式の個室も備えた大箱店であります。
昼は1500円から4500円までのコースが主体ながらアラカルト対応もしているので我々は最初から馬肉主体の単品注文に徹しました。

まずは特選馬刺し(2630円)。霜降り肉が8切れしでしたがまずまず美味しい。ただし甘口と辛口の2種が用意された醤油、辛口でも東京人には甘過ぎに感じて生姜だけの挽回は不可能。九州には「マイ醤油」が必要との意見に納得した次第です。
イメージが沸かなかった桜納豆(840円)、納豆にサクラ(馬肉)を和えただけの物。納豆の味しかせずわざわざ頼むほどのものではありません。この日唯一馬肉ものではなかった辛子レンコン(680円)、辛くて甘口醤油をかけてしまいました。
コースを頼んでいる客も追加で頼んでいたこの店のオススメであるレバ刺し(1260円)、天草の天日塩や胡麻油で食べましたが、新鮮で美味しかった。オススメに美味いものなしと言われますが、この店のレバ刺しは例外であります。
霜降りだけでは本質がわからないと頼んだのはロース赤身の馬刺し(1600円)。馬刺しは鮪や牛と違うのか、残念ながら赤身より霜降りの方が美味しいと悟りました。

次は頼むのに躊躇した特選握り(1890円)。たった2ヶの馬肉タネの握りでして、この価格なら頼む必要なし。連れの食欲も旺盛だったのでオーダーは続きます。
上霜降り馬肉のハリハリ鍋(3300円)、価格が高いだけに量もたっぷり。肉は16切れもあり野菜の量も半端ではなかった。生でも食べられると言う肉でしたが、出汁がやはり甘い。胡椒や塩、柚胡椒を自由にかけられれば、更に満足度が増すことでしょう。

次回はいつ来られるかわからないと無茶を承知で最後に追加したのが和風ヒレステーキ(2100円)であります。グリル野菜も豊富で、これは胡椒が利いていて甘めながら悪くはなかった。
昼だというのに二人で馬肉を食べ飲んでの支払いが1万円台後半。ユッケ騒動の最中、唯一生食肉として流通する馬肉を熊本訪問の際はぜひこの店で食べてみてください。

菅乃屋上通店

シェフが交替して料理が一変、アピシウス

グランメゾンで唯一の3つ星だったロオジェがひとまず閉店したのは3月。ボリー氏からシェフを受け継いだメナール氏の料理は不人気でしたが、何故か人気だけは続いてグランメゾンの中では一人勝ちでありました。

日本だけではなく世界的にグランメゾン(オーナーがシェフを雇う高級店)がパッとしません。その理由は料理人の旺盛な独立志向にあるでしょう。
実力ある料理人達は自信家が多い。野心も強いので雇われシェフには満足しないのです。最近のグランメゾンではシェフに関して人材不足であると考えます。

このフレンチの老舗アピシウスも例外ではなかった。友里が初めて訪問したのは30歳台はじめ。背伸びしての同伴でしたが、場慣れしていない当時の私には敷居が高かったけど以来10年ほどたまにリピートしていました。
当時は故高橋シェフの全盛時でもあり、東京、いや日本で最高峰のフレンチを出す店であったと記憶しております。
ワインの品揃えも凄かった。何十年も前の古酒がリストにはゴロゴロ。値付けも安く同伴に懲りた友里は主にゲット用として使わせて貰ったものでした。

この店に異変が起きたのは高橋シェフがやめた頃。漏れ聞くところ、オーナー家のお家騒動があったようで厨房やホールのスタッフも分断されて混乱。他の銀座地下グランメゾン2店と共に埋没してしまったのです。
お家騒動も落着し、支配人やソムリエのテコ入れもして新生アピシウスとなったのですが、2代目シェフと相性が悪いからか友里の評価は良くなかった。

私の認識が変わったのは今年4月。偶然HPのメニューを目にして、以前と違う美味しいそうな料理表記が気になったのです。前菜の値付けが高くなった感じでしたが、直ぐさま訪問したのは言うまでもありません。

旬のアスパラ(香川産)、一工夫したオランディーズソースも美味しい。
定番の雲丹とキャビアの野菜クリームムースや海亀のスープもまずまず。コンフィとローストの2種の調理で供された仔羊も美味しく鴨肉のパイ包みも面白かった。
ワインの古酒は昔ほどではないですが、このラインアップなら日本では傑出もの。

料理、ワイン、サービスと食後感はかなり向上したと判断したのです。新シェフになったアピシウス、記念日やここぞのゲット用にオススメです。

こんなに高くて客が来るのか、ヘイフンテラス

オープンして何年も経っているのに、一回も足を踏み入れなかったペニンシュラホテル。そのメインダイニングとも言えるこの店へ個人的な接待で行ったのは今年の春でありました。
2階フロアの大半を占めている超大箱店。でも日曜の夜だというのに客が数割程度しか入っておらず、一見豪華に見せる室内は、それは寂しいものでありました。気合いを入れた内装の割に、レストルームは店外というのもいただけない。

着席してまずは食前酒とメニューを見て私は怒りを覚えてしまった。祝い事だったのでグラスシャンパンをオーダーしようとしたのですが、ノンヴィンのモエがなんと3000円。ボトルがしっかり買えてしまう金額ではないですか。あまりの暴利に呆れて諦め、渋々生ビールを頼んだのでした。でもその生ビールも1200円するんですね。なんでこれほどの粗利をとりたがるのか、やり過ぎであります。

酒類も高ければ料理も高い。スープは最低でも1人前が5000円前後。前菜3種の盛り合わせは、僅かなクラゲ、豚、湯葉巻きで一人分2280円。たいした味でも質でもないくせに信じられません。
しかも高いだけではなく融通も利かないのです。連れの一人が北京ダックを食べたいというので頼もうとしたら、1羽(1万6880円)からだというではありませんか。冨麗家のように1切れ対応しろとは言いませんが、福臨門でも半羽でオッケーなはず。かくして5名で何の変哲もない北京ダックを12切れも食べることになりました。

祝いの席なので魚の蒸し物をと頼んだのがアズキハタ。醤油とガーリックを使用しているようですが、MSGを使用していないといっても2万8800円はこの食後感ではいかがなものか。本場香港と比べるのは酷かもしれませんが、費用対効果はあまりに悪かった。

遊び心で頼んだ麻婆豆腐、3680円と高いだけが特徴でした。青菜の炒め(3680円)も量を考えると高い。唯一海鮮焼きそばが具もしっかりあり、2880円が安く感じてしまうといった完全に金銭感覚がマヒしてしまったディナーでありました。

悪くはないけどまったく印象に残らない料理でサービス料10%を入れての支払いが5名で14万円ほど。このCPの悪さでは、ランチ以外で訪問する客が多いとは思えない。客より閑古鳥が多かったのは当たり前です。 
(注)その後金曜に再訪したとき、ホールにかなりの客がいたことを報告させていただきます。