期待したほどの意外感がない、石頭楼 六本木

以前は紹介制だった台湾鍋料理の店。とはいえ1日に1組ほど紹介無しで入店できるシステムがありましたから、「紹介制」は単なる「客釣りキャッチ」ではなかったか。現在は堂々と「一見客も可」となっております。
この店の一番のウリは「隠れ家的」な立地。私道かと思える細い路地を入った突き当たりのマンション、怪しい感じが何とも言えません。初訪問では探すのが大変です。
「紹介制」だった店ということで、頑固な主人と陰湿な女将のコンビを想像していたのですが、ドアをあけてビックリ。スタッフは若い男女ばかりで、マンション数フロアを使ったかなりの大箱でありました。すべてのテーブルにはカセットコンロと石鍋が既にセットされてその夜は満席だとわかりましたが、立地だけで店内は全然「隠れ家的」ではありません。靴をぬぐという面倒なところだけが隠れ家の雰囲気を出しておりました。
料理は石鍋をメインにしたコース2種だけ。基本は5000円ですが、上海蟹がつく8500円もあります。今シーズン未経験だったこともあり、我々は上海蟹付きにチャレンジしました。
まずは紹興酒漬けの小さい上海蟹。元々それほど好きな食材ではないのですが、有名上海料理店に劣るとも勝らないレベルでイマイチ。続いて蒸し蟹が雄雌半尾ずつ供されます。かなり小さいものを選りすぐってきたようで、食べるところがほとんどないのが残念。
そしていよいよ石鍋であります。豚、牛、野菜、水餃子、ワンタンなどの具を、ゴマ油の入った石鍋に入れて煮えたところをポン酢か玉子・醤油・豆板醤のタレで食べます。
薬味は腐乳と擂り大蒜。それほど温度を上げないゴマ油にくぐらせて食べるこの鍋、よく言えばゴマ油の割にあっさり、はっきり言えば肉質が並だからか旨みがなく、薬味を多用しないと味わいを感じません。そして最後はオジヤで〆となります。
ビール700円、紹興酒ボトル3500円、牛肉追加1200円、豚追加800円、野菜追加700円と料金体系は予想より安い設定でしたが、10%のサービス料と追加肉が利いたのか支払額は一人当たり1万5000円弱。周りは若い男女のグループばかりで上海蟹は見当たりません。酒類をそれほど飲まない若い人限定の一見隠れ家的な台湾鍋料理店と考えます。

ファストフードに慣れた客限定、どれ味 銀座店

まさにタレント、業界人好みの店「どれ味 銀座店」。人気店のようですが、私は朝番組「旅サラダ」で小林綾子氏が紹介するまで知りませんでした。
ウリは「マヨネーズパフォーマンス」。何かと思えば、お好み焼きに空中に飛ばしてマヨネーズをかける技であります。味とまったく関係ない「客引き行為」ですが、妙に記憶に残っておりまして、予約を入れました。TVでは客の肩越しに飛ばしたように見えたので万が一を考えて、汚れても構わない服での訪問です。
人気店なのか、17時か20時の入店時刻を指定されます。スタッフは「平日は3回転、土日は4回転する」と豪語していましたから驚きです。アラカルトもありますが、〆に例のお好み焼きがある3コースの中から一番高いその名も「EXPENSIVE」(6000円)を選択。アペタイザーが5皿、いくつかの鉄板焼きを挟んで「どれ味焼き」で終わる10皿超の多皿コースは味濃い料理の連続で、友里の舌と胃袋KO寸前となりました。
まずは韮のビシソワーズ。何とトリュフオイルを注射器で振りかけます。気色悪い。3種のチーズ焼きをトマトソースで食べる1品は、冷めてしけったかの食感で味濃いだけ。牛すじの煮込み、カジキマグロのプロヴァンス風、和牛のコチュジャンソースも単純な濃厚味。肝心の和牛はパサパサでありました。刺身用だというホタテのパン粉焼、なぜか添えられているガリが甘すぎてダメ。ホタテもレアな調理でしたがイマイチ。魂のワンスプーンと称する一口料理は、牡蠣、豚トロ、もんじゃ焼きの皮、トリュフオイルをスプーンに全部盛ってきます。この取り合わせに絶句。牛とフォアグラの「蒲焼きソース」もその発想に唖然。勿論肉はパサパサで料理の体をなしていない。ロブスターのアクアパッツァも、出汁を入れすぎて食材自身の旨みを楽しむものになっておりません。そして「どれ味焼き」、単なるお好み焼きを15に切り分け、長方形に並べ替えてマヨネーズを飛ばしてくるだけの物でありました。
周りの客はほとんどが若者ばかり。ジュースで食べている女性客も多かった。ビールにハウスワイン(ボトル)を頼んでの支払いが一人1万円チョイ。食材の滋味や繊細な調理を好む人には耐えられない「どれ味」、店名を「こい味」に変える事を提案させていただきます。

このコンセプトの店を待っていた、オッジ ダルマット

西麻布と恵比寿に展開していた「ダルマット」が、西麻布店の真上、つまり1階部分に新しいコンセプトの店を出店しました。
5000円前後の多皿コースのこのイタリアン、1500円で白・赤ワインが飲み放題なのが人気の素でありますが、この店は更に予約システムに特徴を持たせております。
予約は当日の朝10時からのみの受付。つまり前日までの予約は受けず、当日に行きたくなった客のみを対象としています。
西麻布(地下)、恵比寿と繁盛店を抱えるから出来るチャレンジだと思いますが、私はこのような店の出現を待っていました。
なぜ鮨屋の予約を1ヶ月前にしなければならないのか。なぜフレンチの予約電話がつながらないのか、といった不満が世に充満しているのではないか。晴れの日の豪華フレンチの予約が1ヶ月前というならまだしも、鮨やイタリアンはその日急に食べたくなって飛び込みたいものだと考えます。
この店はカウンター席より厨房の床がかなり高い不自然な造り。以前の店の居抜きなのか、スタッフの調理を見ることが出来ず、カウンターの面白みがないのが残念。
料理は基本的に他の2店と変わりません。野菜を多用し、魚や肉の前菜に2種のパスタにメインの肉料理と7?8皿の構成。この価格(5000円)なら文句を言えない食材と調理レベル、そして総量と考えます。
前菜の位置づけである魚のカルパッチョ、白レバーのムースやハツの前菜陣もまずまず。各皿には野菜が添えられているのが嬉しい。トマトの冷製パスタはフォークまで冷やしてあるなど細かい気配りもあります。ラフランスとの相性には若干の疑問を持ちましたけど。
そしてメインは鴨と山形牛。多皿の割にはポーションもありました。和牛はそれほど旨みを感じなかったのはこの価格なら仕方ないか。お腹の具合によってグラム指定できるラグー系の温パスタで〆となりました。
コペルトに500円計上されますから実質はコース5500円。しかし、以前よりクオリティアップされた白・赤ワイン(といっても高質ではありません)の飲み放題(1500円)は健在で、生ビール(800円)はチョイ高いですがサービス料も消費税も加算されずの支払いが7800円ポッキリ。私の食後感は「満足」の一言でありました。