廉価チェーン店は高額店の運営に手を出すな、銀座おかもと

マスコミにどんな働きかけをしているのか相変わらずのマスコミ露出で本物を知らない客を釣り続けている「俺のフレンチ」や「俺のイタリアン」を経営している「俺の株式会社」。
ブックオフで不祥事を起こして手を引かざるを得なくなった元創業者、坂本孝氏が率いる原価率60%以上という価格破壊をウリにする廉価店でありますが、高額店も経営していると知る人は少ないのではないか。

この「銀座おかもと」は、麻布十番の3つ星和食で働いていた料理人を雇った客単価2万円以上という、コース1本の高額和食店であります。

最初の訪問は昨年の1月はじめ。銀座とはいえ地下は300円バー、2階は俺のフレンチ系が入るなど雑居ビルの5階と高額和食としては厳しい立地。
2万円のお任せコース1本でありますが、カウンター含め店内の普請は決して高いとはいえないものでありました。

料理は季節柄禁漁ギリギリで間に合った?セイコ蟹(メスのズワイ蟹)や間人蟹(間人港で上がったオスのズワイ蟹)、天然ホタテ、鰤など高額食材を使って高級感を醸し出そうとする努力は見受けられたけど肝心の調理技術は疑問。
皿数も多いけど(10皿以上)炭水化物として鍋焼きうどんにご飯ものが3種(穴子、白魚、蟹)と無駄に多い気もしまして食後感は微妙。
よって評価は再度の訪問後と先送りしたのであります。そして再訪の機会がなくやっと訪れたのが昨年の12月となってしまいました。

まずは炙ったホタテと岩茸の白子ソースと唐墨のたっぷり掛け。
唐墨のアシストで更に味濃い一品となっており友里の好みとは大きな乖離。

八寸は車エビの春巻きがベチャベチャ、海苔で巻いた鯖寿司は塩が強すぎるのか質が弱いからか完全な塩負け。
アワビに乗っていたキャビアは、俺フラ、俺イタに出している一瓶2千円以下のアメリカ産なんちゃってではないのか。その他鮎の白子、蘇(チーズのようなもの)、サンマのへしこなどよくもまあ傾向が同じものばかり(味が濃いもの)を集めたと感心したのであります。

お椀は甘鯛のおかき揚げと堀川牛蒡の白味噌仕立て。
京都の好きな店ほど傑出はしておりませんが、これがこの日一番の料理でありました。

香箱蟹は身と内子を混ぜ合わせる手法に疑問。
くわい煎餅に添えられた蟹肉を混ぜた蟹味噌、味がクリアーでなく何か添加していたのではないか。

そして今回の蟹は港名を言わず「ずわい蟹です」とだけの説明。
直近の偽装問題でナーバスになっているのかもしれませんが、ただの「ズワイ蟹」というと普通「ロシアの冷凍物」を指すだけに、先入観もあって美味しく感じるはずがないではないか。

白味噌椀の次にまともだった辛み大根蕎麦(普通これはどこでも不味くは提供できない)に続いて出てきたモロコは固すぎでペケ。
海老芋の炊き合わせも出汁が甘すぎで、牡蠣フライを添えた舞茸と栗のご飯(これもイマイチ)で〆となりました。

前回より確実に食後感が低下した2万円お任せコース。
母体の俺シリーズに質、調理とも近づいてしまったと感じて店を後にしたのであります。

出禁だったカンテサンス跡に入り込めたけど・・・、ティルプス

日本広しといえど出入り禁止をウリにするグルメライターはこの友里一人。
その友里が「新ばし しみづ」と共に誇る出禁の1店が今夏品川の僻地、もとい足の便が少し悪い地へ移転した「カンテサンス」であります。

この3つ星フレンチ、ソース造りを放棄(実態は造れない)して低温長時間ローストという世界的には廃れてしまった調理法に未だに固執しているのですが、移転後に居抜きのまま元厨房&ホールのスタッフを主体に即オープンしたのがこの「ティルプス」でありました。

食べログ評価では4点を超える高評価店。しかも「カンテサンス」と違ってホール内での料理写真撮影もオッケーと知ってネタ不足の友里がすぐ飛びついたのはいうまでもありません。
それでは前店と違って1万2000円と値下げしたコース1本の料理について述べていきましょう。

まずはアミューズ。玉葱のチップ(チュイルというらしい)にアールグレイの香りをつけた玉葱ペーストをのせた一口アミューズ。
予想よりアールグレイの香りが弱かったけど玉葱の旨みがでていてこれは悪くなかった。

続く前菜の1番目は原木椎茸のバスク生ハム乗せ。
見た目はこれまた一口アミューズのポーションでありましたが、これも選んだ食材に恵まれたからか素直に食べられたのであります。

事態が急変したのはこの直後。
バケットと共に出てきたのは焦がしバター風味のマスカルポーネ。バターよりヘルシーとのことでしたが、キャラメルのような後味ですぐ飽きてしまった。
普通のバター(有塩・無塩とも)がないとのことで、オリーブオイルを出してもらって残りのパンを食べきったのであります。

続く料理はスミイカ。イカスミのチップを添え、グレープフルーツとフェンネルを使った泡仕立てという時代遅れの調理。
甘しょっぱい味付けで友里たちの好みには合わなかった。

その次もなんと泡料理。
ワイを包んだキャベツに根セロリとリンゴの繊切り、そしてコンテ(チーズ)の泡を掛けておりました。
クミンの味が後から利いてくるのでなんとか食べられましたが、これまた食欲をそそるものではなかった。

まだまだ前菜は続きまして、お次は柿のタルトとビスケットに挟まれたフォアグラのテリーヌ。
うーん、塩はしっかり効いているけど何か足りない。全体に緩いんですね。
連れ共々テンションがどんどん落ちてしまう調理なのであります。

魚料理は鰆の低温ロースト。
見た目が半生なだけではなく食感も柔らかすぎで、本来は身質が固い鰆とはとても思えない代物。添えられたいぶりがっこと焼き茄子のペーストもミスマッチです。

そして肉料理はこれまた半生に見える鳩(肝付き)。
カボチャのピュレやジュ、レモングラスの力を借りても味わいはイマイチというか、これまたまったく食欲が進まない調理でありました。

師匠のカンテサンス・岸田シェフと同じく弟子の造る料理もすべてトーンが同じで引き出しの少なさが丸見え。
連れの

これならカンテサンスの方がまだ美味しい

という感想に、友里も納得したのでありました。

料理は悪くないけどあまりにCP悪すぎ、瓢亭本店

身内から「瓢亭玉子」を食べてみたいと言われて4年ぶりに訪問(でも2回目)した京都の料亭形式の和食店。
単なるゆるめの茹で玉子だからどうってことないと説明したのですが、食べてみなければわからないとの要望に友里は重い腰を上げたのであります。

瓢亭 本店

 

朝がゆなど安いコースにも瓢亭玉子がついているとのことでしたが、どうせ行くならこのコラムのネタにしようと考えまして、夜と同等といわれる自称懐石料理(2万7000円)を昼訪問で頼んだのであります。

紅葉シーズンの終わりでありましたが予想以上の道混雑でちょっと遅れて到着。
そのまま即茶室へ案内されたので他の部屋の状況を実際に見ることは出来ませんでしたが、食事のさなかの中座(おトイレタイム)で付近を歩きまわったところ、盛況さを感じ取ることは出来なかった。
その理由は、「この料理ではあまりに価格設定が高すぎる」という最悪のCP感からであるとの結論に友里はコース半ばで達したのであります。

 

まずは、冬は寒く夏は暑い茶室(エアコンの効きが悪い)に直座りして出てきたお膳を見てビックリ。
折敷と言っても足打のお膳に乗っていたのは唐墨大根と柿と胡瓜の白和え、そして鯛の刺身でありました。

なんちゃって飯、汁、向付

 

普通、うやうやしく茶室へ通され、懐石料理(会席ではない)と自称されたら、折敷に乗っているのは飯椀、汁椀、向付の3種ではないか。
不調法な友里でありますが、お酒を飲む前に汁や飯でまずは胃を満たすのが懐石の作法と聞いているだけに、居酒屋や小料理屋で見かけるようなツマミが初っぱなにでてきて驚いたのであります。

これって懐石じゃないじゃん

大根は炙ってあってそこらの居酒屋ツマミよりは手をかけておりましたが、白和えはまったくの普通味。
救いは関西では珍しくかなり寝かせていたと思われる鯛の造りでありました。これはそれなりに美味しかった。

 

そこで続く椀盛に期待したのですが、出てきたのは大根の薄切りに小豆が数粒入った白味噌椀。出汁は鮪節使用で悪くはなかったですが、このコース価格では手抜きではないか。

白味噌お椀?

 

 

そしてウニイカ、鯛寿司(いずれも小盛り)と共に本日のメイン、瓢亭玉子の登場です。
いずれも悪くはないけれど、どこでも食べられるレベルのもの。(瓢亭玉子も)

ただの茹で玉子、もとい瓢亭玉子ほか

 

 

そして続いた海老芋の炊き合わせ(強肴?)のような料理を見て友里は焦ったのであります。

おいおい、この後は焼き物で〆のご飯となってしまうではないか

 

海老芋の炊き合わせ

 

 

皿数だけは懐石並(でも八寸や預け鉢などに相当するものがあったかどうか)で少ないですが、中身はよく言って会席、はっきり言って小料理レベルであるだけに、友里たちの大驚嘆は大変なものがあったのです。
案の定次に出てきた甘いだけのマナガツオの焼き物の後、舞茸とムカゴのご飯などで料理は終了となってしまいました。

マナガツオの焼き物

 

 

舞茸とムカゴのご飯

 

そして最後のデザートではい終わり。

甘味

 

 

う~ん、京都に用事があったからといってもわざわざ東京から来て一人当たり3万円以上支払っての、茹で玉子&小料理だけのオモテナシ。

価格設定が半額になったとしても友里の再訪はあり得ません。