少量多皿の街場フレンチ、ル・マンジュ・トゥー

「東京最高のレストラン」というガイド本に登場する「ヨイショライター」たちに何故か人気の神楽坂のフレンチです。
オープン当初は3800円と気軽な店でしたが、ミシュラン2つ星になった現在は1万2600円のコース1本に変貌していますから驚きです。
脅迫してきた和食料理人と共に友里を締め上げようと一昨年同じく2つ星和食店へ乗り込もうとした谷シェフ。結果は断念して帰ったようですが、私の顔を知っている事を承知で8月半ばに再訪を敢行しました。
選択の余地がない「お任せ」いや「お仕着せ」のコースは、以前と変わらず「少量多皿」。デザート2つをいれて、9皿であります。
まずはグレープフルーツジュース。シャルトリューズの泡が乗っていますが、これで立派な1皿。続くエスカルゴの串揚げもわずか1串。ニンニクとパセリをまぶしていて悪くはないがフレンチとしては疑問。ミシュランにはシェフが特別の思い入れを持っているとあったフォアグラのムース、質が悪いのか塩負けしていました。鰻のテリーヌは味が濃すぎて夏に向いているとは思えない。続くポルチーニの細切れが入ったトリッパも味濃い一品。単独では良いですが、鰻の後ではやり過ぎです。ヒラメのポワレもフォンをベースにしたソースのバターがくどく、メインのバスク豚もこれだけ脂があるなら、濃いソースではなくシンプルな調理にするべきでしょう。味濃くメリハリのない調理が続く少量多皿コース。重めの調理と言っても「シェ イノ」の本格的なクラシック料理とは次元が違いました。
ただしワインの値付けは高くない。ノンヴィンのシャンパンが9000円、白・赤の村名も6?8000円からあります。ただし、1490円のグラスシャンパンは、安くても美味しくなかったのが残念。
友里色を隠すため、ビールを封印してグラスシャンパン、グラスの白に赤ワインをボトルで頼んでの支払いが一人当たり2万3000円ほど。高額フレチでもなければ廉価店でもない価格設定で、調理も中途半端。3800円コースが原点なだけに、ここまで値上げしてのコース造りには無理が出ていると考えます。2つ星はまったくの過大評価。選択肢がありもっと美味しい他店へ行ってください。

ただのダイニング和食ではないか、万歴龍呼堂

ミシュランが21日に発売されました。そこで今週は、まったく☆に値しない和食2店(2007年版掲載)を取り上げます。
まずは東麻布の「万歴龍呼堂」です。本当に美味しい和食を提供できるなら、こんな内外装にする必要があるでしょうか。この店の料理長は「祇園 丸山」で働いていたという澤田和巳氏。この京都の有名店で修業した人がなんで格落ちのダイニング系の料理長に就任するのか。予想通り他のダイニング系和食と同様、食後感は悪いものでした。
門扉を開け打ち水された小庭を通って無意味に長い赤松のカウンターに着席。オープン当初は1万円前後のコースでしたが、現在は1万円、1万5000円、2万円、2万5000円と価格だけは高額和食の仲間入りをしております。内容を熟考の上、一番CPが良さそうな1万5000円を選択。
鮑の白味噌和えはダイニングのスターターとして想定内。牡蠣、伊勢海老、湯葉などのスープ仕立ての蒸し物は、トマトがミスマッチです。造りのヒラメが私には天然物と感じず、マグロも水っぽい。甘鯛のお椀、器のセンスはイマイチですが出汁は思ったよりはマシでした。フォアグラとアナゴ、大根の焼き物に添えたホウレン草ソースも美味しくなく、飯蒸しは柚子が強すぎでアンバランス。メインの鴨鍋は出汁が濃すぎて飲む気がしません。〆のご飯は「うずみ豆腐」といって豆腐粥のようなものでしたが、ご飯に豆腐を混ぜて何を訴えたいのか。料理長の意図がわかりませんでした。
酒類も高い。グラスシャンパンが2100円、ブルゴーニュの地方ワインが1万円前後。ネットで6000円前後の村名ワインが1万5000円を超えていましたからやり過ぎです。日本酒も種類が少なく燗酒はわずか1種だけ。驚いたのは焼酎の瓶はすべて水で約半々に薄める「割水」をしています。1週間置いてまろやかさを出しているというけど、薄過ぎでした。
ビール(900円と高い)に酒(1200円とこれまた高い)に焼酎やシャンパンをグラスでチビチビ飲んで一人2万円強の支払いはCP悪過ぎとしか評せません。
厨房スタッフが少ないのかデザート入れて9皿なのに皿出し遅く所要時間はなんと3時間。この支払でこの食材にこの調理、そしてサービスでは、一切近づかない方が無難であります。

ミシュラン掲載を拒否すべきだった、湖月

この店の1つ☆も何かの間違いではないか。常連たちの中で静かに運営していれば、少なくとも検証精神を全面に出した友里征耶の訪問は受けず、実態を晒すことはなかったと考えます。
ミシュラン掲載の通り、電話予約では1万5750円のコースしかないと女将は言っていましたが、後から一人で入店してきた常連客には「お品書き」を示して単品注文を受けておりました。あからさまな常連重視、嫌な店です。
スタートの先付けは「造り置き」の鱧ソーメン、鱧子、サーモン、海老(黄身酢)、落雁。かなり前に造り置いた街場店の宴会料理のレベルであります。ソーメンの出汁もかなり濃すぎ。お椀はこの時期お約束の鱧とジュンサイで、かなりインパクトある味。余韻は短いながらこの日唯一「まずまず」を感じた一品であります。造りは大量にバットに造り置いていた「鱧の落とし」と「カンパチ」に「鯛」。いずれも切り置いてあった刺身であります。こんな出来合調理なら、カウンター形式にしない方がいいのではないか。ここの常連は、造り置き、切り置きの連発にあまりに寛容過ぎます。続く「胡麻豆腐」の出汁はペットボトルに入っておりました。奥の厨房で焼かれた鮎の塩焼きはかなり大きい。炭火焼でないからか、焼きが緩く美味しくありません。
その後、タコ酢を供された時は小料理屋に入ったかと思いました。茄子とニシン、カボチャの炊合せも出汁が濃い割に素材に味が染みこんでいない。ご飯ものは飯蒸し(鯛入り)、もずく雑炊、ソーメン、いくらご飯からの選択ですが、客単価2万円近くの和食としてはあまりに貧弱すぎです。味噌汁も造り置きを再加熱しておりました。
ミシュランでは「京料理」と紹介されていますが、この「造り置き主体」のお店、果たして料理長は真の「京料理店」での修業経験があるのか疑問であります。
食材の質もイマイチ、調理も手間をかけず造り置き主体。街場の小料理屋に毛が生えた程度のこの和食屋で2万円前後の支払いは悪い冗談としか思えません。
造り置き主体だから料理の皿出しもはやく1時間20分あまりで終了してしまった自称「京料理店」。
ミシュラン掲載をオッケーしたために、実力のなさを晒してしまった典型的な例であります。