繁盛店の傲慢さがでてしまったか、未在

繁盛店、有名店のお約束の道をたどってしまったと感じた久々の京都は丸山公園内の「未在」への夏の再訪でありました。
当初はカウンターを満席にせず、時間をずらしてキャパの半分しか予約を受けなかった変則2回転営業だったのですが、いつの間にかカウンター席全員(6名)時間厳守(17時45分集合 18時一斉スタート)になっておりました。クオリティを保つためキャパ全員の料理を同時に造るのを回避した変則2回転営業が、店の都合を優先するブロイラー方式に改悪していたのです。なぜ店の都合で18時から一斉に食べ始めなければならないのか。「祇園 さヽ木」と同じく繁盛店の驕りを感じてしまいます。
吉兆嵐山本店の料理長まで努めたという石原仁司氏、イケイケドンドンの現総料理長である若主人、徳岡氏との関係で独立したと漏れ聞きましたが、そのうち「祇園 さヽ木」を真似て大箱店へ移転、ピザ窯まで備えてしまうのではないかと危惧してしまいます。当然ながらコースも2万5000円と値上げておりました。
茶懐石を意識した最初のお膳は飯、汁、向付。八丁味噌仕立てのズイキの汁に茄子の鰹&昆布のジュレの向付は普通でありました。鱧の落としは3片だけ。チリ酢、梅肉、鱧の肝が乗せられていますが、肝心の鱧が薬味に負けて旨味を感じません。
造りのアオリイカ、鯛、マグロも質は普通か。サイコロ状の醤油の煮こごりは余計でありました。お椀はタネが鮎豆腐。以前は吉兆そのものの出汁だと感じましたが、今回は昆布が強すぎるのではないか。そして焼き物は黒毛和牛。実山椒のソースは悪くなかったが肝心の和牛の質に疑問。続く箸休めの「山葵と鯛の肝のシャーベット」は山葵が変に甘すぎて箸休めになりません。豪華だった八寸も稚鮎、鱧子、鯛寿司、鴨ロース、さえずり、枝豆、ウニソーメンとアイテムは豊富でしたが、全体にクオリティが落ちたと感じました。冷製の賀茂茄子の焚き合わせの後、焦がし湯と氷菓にフルーツで〆となりましが、
一人当たり3万円弱の支払いを考えると、食材、質含めCPはかなり劣化してしまったと判断。客は信奉者のリピーターが多いようで、店としての進歩が止まってしまったのかもしれません。当分は再訪は出来ないなと思って店を後にした次第であります。

鯛飯屋が天麩羅を出しているだけ、与太呂

ミシュランが星1つを献上した天麩羅屋「六本木 与太呂」。未曾有の不景気の現在はわかりませんが、初訪問時は盛況店でありました。家族経営で主人と女将、そして長男夫婦も人当たりがよく予約電話の時も気持ちが良かった。友里征耶の定説に「性格の悪い料理人の店に美味いものなし」がありますが、「性格の良い料理人の店でも美味しくない場合がある」のは仕方がないことか。躊躇しましたが、そこはミシュラン掲載を承諾した公の店、感じたことをズバっと書かせていただきます。
L字型のカウンター18席と天麩羅屋としてはかなり大箱。隣客と肘が干渉しますから詰め込みすぎです。料理はコース(1万3650円)1本でありました。
まずは牛の握りが突き出しとして2ヶ。酢飯は赤酢でしっかりした味で、滅多にこの手の握り(牛)を食べませんが、悪くはなかった。続いてこの店のウリである「鯛」の造りが登場します。チリ酢、ポン酢、醤油で食べるこの鯛、ミシュランでは「天然」とありますが、旨みに欠け脂っぽいのが気になりました。でも天麩羅屋の刺身としては悪くはありません。そして次の天麩羅を見てしばし唖然となりました。海老のすり身を挟んだトーストは銀座の「由松」や「京星」と同じ。キスも小さいものを開いてから身を重ねて揚げるのも同じ手法なのですが、薄い膜を1枚被っているというイメージの衣、目が細かいというか、ヌメっとしていてカラッ揚がっておりません。火力の弱い家庭で揚げた天麩羅に似た感じなのです。しかも種類が少ない。トースト、海老(3尾)、キス、レンコン、烏賊、椎茸、茄子、インゲン、小タマネギだけで穴子やかき揚げなどがないのです。天つゆがなく塩しかなかった理由が天麩羅を終了してはじめてわかった次第です。最後の土鍋で供される鯛飯は良かったのですが、全体の総量も少なく食後感はイマイチ。
天麩羅は都内の有名店と比べるのが可哀想。鯛飯を出す天麩羅屋というより、天麩羅を出す鯛飯屋と言った方が、座りが良いのではないでしょうか。天麩羅自体ではなく、接客など主人たちの人柄を全面に、常連や口コミの客だけで露出を抑えた方が、私は存在価値があったと考えます。家族経営の店だけに、ミシュラン掲載を断る勇気を見せてもらいたかった。

巷の不況感を忘れさせる、バルバッコア グリル

和食、洋食と比較的廉価な店を多店舗展開しているワンダーテーブルの中では人気のバルバッコアブランド。食べ放題のシュラスコ料理店で、東京だけでも新丸ビル、お台場と他に2店はあるようです。昨年新丸ビルの「バルバッコア クラシコ」へ行きまずまず満足した友里、青山店である「バルバッコア グリル」はより値付けが安いと知りまして、再びチャレンジを思いついたのです。
結構混んでいるとは思いましたがそれはリーマンショックまで。この未曾有の不景気では大丈夫だろうと数日前に電話して驚いたのです。土曜だというのに喫煙席しか空いていない!家族連れに紫煙を禁物と1週間後に変更しました。
18時過ぎに入店でしたが、店内は既に熱気でムンムン、結構満席です。食べ放題の前菜ステーションは客が列を作っておりました。
生野菜のサラダを含め20種ほどある前菜に加えて、鶏、仔羊、豚を含めたシュラスコが10種以上食べ放題で4500円は、味に少々難があっても納得する価格帯だと思いますが、熱気ある臨場感も手助けしてか各料理はそれなりに美味しく感じるのです。
生野菜の種類も豊富。レタスなど葉物系だけではなく、人参やブロッコリーまで完備して野菜好きな友里には嬉しい。肉類の食べ放題が控えているからとセーブしましたがそれでも前菜だけでおかわりは2回したでしょうか。この段階でかなり膨満感が出てきてしまいました。前回の「バルバッコア クラシコ」と同じ轍を踏んでしまい戦略的に失敗です。
コインを反転していよいよシュラスコの登場。ピッカーニャ(尻の部分)、カイノミ、ランプ、セブ牛のコブ(コンビーフのような味わい)など牛の後、ハツ、ローストチキン、仔羊、ソーセージ、豚ロースと勧められる度に口に入れてしまうのは食べ放題の気軽さからか。
酒類も時間制(2時間以内)でありますが、2000円から4000円まで3コースの飲み放題(飲めるワインの違い)も安くて有り難い。飲んで食べてお腹一杯になって一人6?7000円の営業形態ではこの不景気もさほど脅威ではないでしょう。
食べ放題好きな友里の評価だけではなく、家族もまた行きたいと言っていたことを最後に付け加えさせていただきます。