あの店は今・・・ジョエル・ロブション

出来レースで3つ星になると予想し、発表数日前の再訪でした。訪問時期の公開は正体を特定されるとのご心配は無用です。薄々感じていたのですが、友里はこの店で顔バレしていました。同伴者の予約名で席へ案内される途中、スタッフから、「最近お忙しいですね」と言われたのです。若いソムリエだけではなく店中に知れ渡っているようです。前菜とメイン2皿のアラカルト注文だったのですが、「甘鯛のポワレ」のオマケにはビックリ。これが噂の「特別待遇?」。連れも大変喜んでいましたが、マスヒロさんや来栖けい氏など顔出ししている人には良くある事なのでしょう。でも店に友里の情報を聞き出さないでください。営業で知り得た個人情報は漏洩できないからです。
3万5000円の多皿コース1種だったオープン時と違って、2万2000円のコースといくつかのアラカルトも用意するようになりました。修正はしていますが、経営している宅配ピザ「ピザーラ」で有名な「フォーシーズ」の戦略が私には未だ理解できません。普通食通やフレンチ好きはコースなんて頼みません。旬で好きな食材を大きなポーションで食べたいからアラカルトで頼むものです。慣れていない同伴カップルや経費族、年配客が逃げ込むコースを主体にしているだけで、経営会社のノウハウレベルがわかるというものです。やっつけで用意しただけなのか、アラカルトは前菜6種、メインは魚が3種、肉はハラミ、仔羊、豚バラ肉と3食材でまったく選択肢なし。この時期にジビエがないのになぜ3つ星になれたのか不思議であります。
肝心の料理はというと、ドライアイス使ったパフォーマンスだけのアミューズは余計、フォアグラと鰻のテリーヌ(7500円)は業界人好みの濃厚味だがまずまず、オマール(9500円)はこの価格では美味しくて当たり前、クミンなどスパイスが前面に出た仔羊もまずまず、とオマケの甘鯛が利いたわけではありませんが、料理はCP考えなければまずまずの食後感。そして特筆すべきはパン。アンチョビ、ベーコン、バジルなど種類多く食べ放題。食後のチーズも思ったより安くて美味しかった。アラカルトなのに量が少なく、ワイの値付けも高くCP良くない高額フレンチでありますが、料理に良いものがあるので☆2つです。

高級食材オンパレードの創作京料理、久

先斗町入口から上がって市営駐輪場を抜けた左側に店を構える「くしかんざし 久」。変な店名は、昔串揚げ屋だったからだそうです。あの1つ星「幸村」の主人も、和久傳へ入る前ここで働いていたと主人から聞きました。
カウンター10席足らず、主人と女将の小さな店です。マスコミの取材拒否ですが、ネットに店情報が結構出ていますので取り上げます。
この店は純粋な「京料理」ではありません。天然鰻、天然岩牡蠣、鮑、ウニ、松葉蟹など高級食材を各皿に盛りこんだ「創作京料理」。文化人、業界人、放送作家など濃い目の味付けを好む人たち、高級食材の羅列に目がない人たちにウケる店だと思います。
一昨年に続き訪問した昨年末、まずはセイコ蟹からスタート。大きな雌蟹で内子も美味しいのですが、甘いポン酢が私には疑問。聖護院大根と鯛の子もやや甘めでありました。足摺岬の岩牡蠣、やはり天然だとこんなに小さいものなのか。ポン酢かけ過ぎですが珍しい一品です。自家製カラスミはネットりしていて甘い大原大根との相性は良かった。カワハギの肝和えも濃い味わい。タイラギ、貝柱、丹波猪の味噌和え、天然ナマコ、グジなどを使った蕪蒸し、鴨葱焼き、と高級食材オンパレードの濃厚な味付けの皿が続きます。京都でこの時期お約束の海老芋は酸っぱい味付けで面白かった。
そして〆のご飯ものは、この店のスペシャリテ、オムライスであります。
オムライスと言っても普通の洋食屋とはまったく別物。アワビ、鴨ロース、ウニ、フカヒレなどを使用したスッポン出汁の玉子餡かけ丼です。これまた濃厚味。これを出されたら、業界人はじめ山本益博氏、門上武司氏も完全ノックアウトか。相性関係なく高級食材をふんだんに使った料理に目がない文化人や放送作家が泣いて喜ぶ究極の〆ご飯であります。
支払額は2万円前後、主人の業界話も面白く、これだけ濃いとワインにも合うか、ワインの持ち込み可だと聞きました。
友里が頭に描いている「京料理」とは対極にある創作料理。東京からわざこの店だけを訪問するのはおススメできませんが、連泊で京料理に飽きた時に経験してみたい店ではないでしょうか。普通の京料理に慣れている京都や関西の方が時たま訪問するにはもってこいの店だと考えます。

ワインの値付けだけでなく料理も良くなった、ボン・ピナール

オープン当初に訪問し、破格に安いワインに驚きながらも、料理はそれほどでもなく皿出しが遅すぎて食後感が良くなかった元麻布のフレンチ「ボン・ピナール」。久々に訪問してビックリ、かなり修正されて良い店になっておりました。
とにかくワインが安い。ノンヴィンのシャンパーニュが6800円。平気で1万円超える店もありますから良心的。驚いたのはクリュッグのグランキュベです。なんと1万5800円。これってほとんど小売値か、もしかしたら安いかも。クリスタルも2万200円ですから、高めの店の半値以下であります。スティルワインも半端ではありません。86年のブルゴーニュ1級畑が軽く1万円を切っていましたから信じられません。おそらくワインの値付けは、仕入れ値に数千円の粗利を乗せているだけではないか。よって高額ワインになるほど割安感が増大するわけです。仕入れルートや保存もいいようで、ワインの状態は問題ありません。料理は前菜が1800円前後。肉料理は3000円前後、ジビエは4000円超と普通のフレンチ並、ワインほど安くないのは仕方ないか。
前回はアミューズが出てくるのに40分を要しその前にシャンパーニュ1本を飲み切ってしまいましたが、今回の白レバームース、割とすぐ出てきました。濃厚で美味しい。パートフィローで包んだブーダンノワール、田舎風パテといった前菜ビストロ料理もボリュームがあり美味しい。ちょっと高かったメインの猪ミンチのパイ包みも満足する味わいでした。おいおい、こんなに美味しかったっけ、とその想定外の料理の進歩に我々は驚いたのです。
皿出しも早くはないですがストレス溜まるほどでもなく、4人でビール、グラスシャンパーニュ、ボトルワインを2本頼んで5万円台半ば。たいしたワインも飲まず本数抑えた名古屋の「オーベルジュ ド リル」での一人分に匹敵する支払額でありました。この味、この量、このワインで不満に思う人は居ないのではないか。同伴者も皆再訪したいと言っておりました。「ビストロ ド ラ シテ」のような重めのビストロ料理ではありませんが、トータルの満足感はこちらの方が上かも。近所の人気店「ブルギニオン」にとって、大きな脅威になると考えます。