デカいだけで大味の鰻、神田きくかわ

この本店を入れて都内に3店舗展開するネットで人気の鰻専門店。すべて直営店だと思うのですが、この店は愛知県幡豆郡一色町に直営養魚場があると公開しています。3店舗で養殖場を持って採算がとれるのでしょうか。
神田の昔風の一軒家で雰囲気はでています。1階が禁煙、2階が喫煙可と分煙システムで昼時の店内は満席。ほとんどの人が頼んでいる「うな重」は大きさによって、(イ)、(ロ)、(ハ)と奇妙な名づけで、2620円、3150円、3670円と立地、店構えの割に高い値付けです。「ぐるなび」では、「江戸前のうなぎ料理は時間がかかる。せかされるとはんぱな仕事になるんでね。でもかならずいい仕事するからまかせなよ」と38分かかると書いてあったのですが、真ん中の重は20分かからず出てきました。その重を一目見てびっくり。J.C.オカザワ氏は量が多いと言っていましたが、尻尾が重からかなりはみ出る大鰻が品なく2匹乗っております。見ただけでひいてしまいましたが、目を瞑って口に含むとまず詰めの緩いタレの甘みを感じ、次は脂味だけで、肝心の鰻自身の旨みを感じません。品質が安定した養殖鰻のいいところを感じず、山椒を多めにかけてやっと食べきることができました。おかげで私は今まで過大評価でたいしたことないと言ってきた「野田岩」や「尾花」の鰻を見直したくらいです。
ネットではサービスが悪いとありますが、私に言わせると「鰻」が悪い。どう考えても高額鰻店が扱っている品質の良い「養殖鰻」と異なるもの、質だけの問題ではなく、種類が違うかもしれない
と感じたのです。紹介してくれたJCも、種が違う可能性があると後日言っておりました。その正否は別にして、高額店の仕入れる養殖鰻とは違う質のものを使用しているのは間違いない。自社の養殖場をもつ理由はここにあるのでしょうか。「養殖ハマチ」にも似たくどい脂を感じる食後感の鰻蒲焼。そりゃ量も重要な要素でありますが、大きくて量があれば何でも良いって訳ではありません。行列作って食べに行く客が多いのですが、皆さん、他の高額鰻屋と同じようなレベルの鰻だと思って食べているのでしょうか。価格だけは高額店ですが、過大評価の他店よりも食後感が悪い店。友里がおススメできる鰻屋ではありませんでした。

人材不足で支店を出すとは、てんぷら山の上 Roppongi

「楽亭」や「近藤」といった都内の人気天麩羅職人を輩出した「山の上ホテル」。彼らの成功を見て機会を窺っていたのでしょう、ついに本体が東京ミッドタウンに進出してきました。ガレリアという高額飲食店を集めたエリアの3階フロアに上がると、喚起の悪さを曝け出しているのか店外でも油の臭いを感じます。夜のコースが9450円から1万5750円までの5コースと立派な高額天麩羅店なのですが、カウンター席よりテーブル席が多いのはいかがなものか。鮨もそうですが天麩羅も出来たてを食べたいもの。カウンターより客を多く詰め込めるテーブル席を主体にして売り上げ増を狙ったのでしょうが、「つな八」のような廉価な店ではなく、客単価1万円以上の「高額店」です。拘りを捨てて拝金主義に奔っていいのでしょうか。コース設定もおかしい。9450円には天丼などご飯物がない。1万2600円には海老、魚、野菜といった通常のコースの他、海老と野菜だけのコースがあります。海老が2尾あるとはいえ野菜だけのコースで1万2600円とはいい商売しています。1万3650円コースには刺身がつくが、最高の1万5750円はタネが違うからか刺身がついていません。最高額コースを好む接待族には、追加で刺身を頼ませて売り上げ増を狙う高等戦略でしょう。
では料理はというと、店側の狙いにはまって最高額コースに追加で頼んだカツオの刺身に後悔。肝心の天麩羅もタネ質普通で揚げの技術も低いものでした。最初の海老の頭でさえカラッと上がっていないのですから他のタネも追って知るべし。メゴチ、稚鮎、伏見唐辛子といったレアタネもがっかりでした。揚げ職人は2名、見た目で判断してはいけませんが、経験を積んだ人にはとても見えない若い人。ホールスタッフの対応も悪く、客が少ない夕方なのに頼んだ物がタイムリーに運ばれませんでした。支店を出すには教育不足というかまったくの人材不足。ワインなど酒類の値付けも高く、支払額をみてあまりのCPの悪さに唖然としました。本店出身「楽亭」のコースは、もっと質の高い刺身(4000円)を追加しても1万6000円ですから、「山の上 Roppongi」のCPの悪さが際立ちます。再開発地への安易な出店、わざわざ行く必要はないでしょう。

あの店は今、畑中

マスコミで見かけなくなりましたがまだまだ人気の麻布十番「天ぷら 畑中」。数年ぶりの再訪で食した、小鉢、海老3、魚4、野菜5、掻き揚げ、ご飯、漬物に果物の8400円コースはまずまず。揚げ方、タネ質も悪くなく、特に海老が3尾でるなど価格を考えるとCPも悪くありません。しかし料理以外で主人の性格悪い面をいくつも見せられてしまいました。
この店は一人客を「嘘ついて」断ります。予約の電話(4?5日前)で一人と言うと女将は主人と相談するためか保留にし、しばらくして「当日は満席です」。この間の悪さに疑問を抱いた友里は、すぐさま知人に同じ日時に2名の予約確認を依頼しました。私も数十分後に別の電話から声色かえて2名で打診。結果はどちらも予約がとれるとの回答を引き出したのです。カウンター形式の店で嘘ついて一人客を断るな。一人だと最後に1席無駄になる可能性があるとのセコイ考えなのでしょうが、それならば堂々と一人客お断りと言えばいいのです。そう出来ないのは、当日になっても埋まらない時は一人客の予約を受けるからでしょう。しかも訪問当日、親しそうな常連が一人で立派に座っておりました。隣の席は勿論空席でした。
次の問題点は「お通し」の押し付け。小鉢付のコースで最初に出てきたのが「〆さば」。天麩羅を食べている途中で今度は「鰯の時雨煮」がでてきました。お得なコースだと思ったのですが、帰宅後に明細をみてびっくり。〆さばを「お通し」と称し、735円別途に請求しているではありませんか。居酒屋のような単品料理店なら「お通し」別請求はわかります。しかし、コース料理で「お通し」を「客の了解なし」に出して請求していいのか。そしてトドメの駄目出しは友里得意のカード手数料問題です。メニューには5%のサービス料を頂くとありますが、現金なら請求しないと明記。要はカード会社が客への転嫁を禁止している「手数料」を「サービス料」と言い換えて請求する「詭弁」であります。手数料を客に転嫁していないとカード会社に弁解できると考えた「悪知恵」。一人客に嘘をついて断る、コース制なのに「お通し」を断りなく出して請求する、カード手数料を「サービス料」と称して客に転嫁する。こんな主人の店へは行かない方が無難です。