鮨とスイーツのコラボ、ベルヴュー

不景気なので集客のため目先の変わった企画をひねり出したのでしょうか、ホテルニューオータニ。
「江戸前ディナー」と銘打った三日間限定の案内を見て私は驚きのあまり椅子から転げ落ちそうになったのです。

「江戸スピリットを生きる2人の美味職人」とのキャッチのホテル開業45周年イヴェント、なんとこの2月16日に上野毛から銀座へ打って出る人気鮨店「あら輝」の荒木水都広氏とホテルニューオータニのパティシエ・中島眞介氏のコラボなのです。スイーツに「江戸前」があるものなのか、いやそれ以前に鮨とスイーツのマリアージュが可能なのか。スイーツ3品入れて計9品のディナーが2万円(税・サ別)と割高に感じましたが、捨て石覚悟で私はこのイヴェントに潜り込みました。

まずは荒木氏の提供する蝦夷鮑の素蒸しと車海老のミソ和え。部位が小さく旨みをそうは感じません。つづく3皿は中島氏の作。亀戸大根“江戸の印籠”煮と称するものは、蒸した大根にアサリやシメジの細切れと荒木氏作の唐墨を乗せ、唐墨、白味噌、マヨネーズを和えたソースがかかっています。何とも不思議なお味。鰻豆腐は豆腐を使用した「もどき料理」。正直言って美味しくない。トマトのコンソメ“黄金の雫”は透明なトマト出汁にオマールとエシャロットを詰めたトマトが浮かんでおりました。

お待ちかね荒木氏担当の穴子の棒ずし、酢飯の塩が強く穴子とマッチしていない。これならツメを塗るべきでしょう。幻の卵焼も見た目は伊達巻きで全く傑出していない。
そして赤身、中トロ、トロの3ヶを荒木氏がテーブル前で握るパフォーマンスです。でもたいした握りではなかったのが残念。その後再び中島氏のスイーツ3皿でコースは終わりとなりました。鮨職人のイヴェントなのに、握りが3ヶで物足りない客には、2625円の追加費用で「あら輝」名物のチョモランマ(マグロを使った手巻き)が用意されています。

ぬる燗なくわずか1種の本醸造冷酒だけでは物足りず、甲州やシャルドネのグラスワインを頼んだ支払いが3万円前後。上野毛ではツマミと握りにぬる燗をかなり頼んでも2万円は超えませんでしたから、最悪なCPの江戸前ディナーでありました。ホテルのイヴェントにCP良い企画なし、新しい友里の定説です。