友里はJ.C.オカザワさんとの共著「グルメバトル」などで、都内の「高額洋食屋」の価格設定に関して「いい商売している」と主張しました。ケチャップとチキンの細切れや玉葱にライス、そし誰でも売値を知っている玉子をつかっただけのオムライスが2千円前後、フレンチの煮込みより手間かからないシチュー類が3000円強では、フレンチシェフの立場はないのではないか、というものです。
非常に付加価値があるのが高額洋食だと思うのですが、「ダンチュー 11号」の「洋食屋特集」を見てもっと高い洋食屋が存在していることを知りました。
創業大正2年の本所吾妻橋「レストラン吾妻」です。ランチは値引きがあるようですが、オムライスが3675円、ビーフシチューが4625円、比内地鶏を使ったカレーがなんと5250円です。
このカレー、グランメゾンの「アピシウス」のメインと同等か高い価格ではないでしょうか。行ったことのない店だったのですが、年配常連客で賑わっているとのこと。集客に苦しむフレンチ(もっと安い価格なのに)が多い中、なぜこのような超高額洋食屋が流行っているのか、友里流に考えてみました。
まずはこれら高額洋食屋(いわゆる洋食しかださず客単価が夜5千円以上)の立地を見てみてください。だいたい、浅草など下町、そしてせいぜい銀座ではないでしょうか。
どちらかというと下町には高額フレンチやイタリアンは少ない。予算をあまり気にしない記念日的な食事、または経費で対処できる接待で利用できるフレンチ、イタリアンの店が少ないのではないか。
そしてキーワードは年配客です。いずれの高額洋食屋もそれを支えている常連は年配の方が多いということ。フレンチ、イタリアンより彼らには親しみやすい、馴染みあるのが「洋食」ということでしょうか。ケチャップ、マヨネーズなどわかりやすい調味料も年配客にはありがたいでしょうし、メニューもすべて読めるというか何が出てくるかわかるのも安心です。
本場とは全く違う日本風イタリア料理の「キャンティ」が年配客で相変わらず賑わっているのも同じ理由だと考えます。
いつもと違ってちょっと豪華に、または経費で接待に、といった客や年配の方を中心にしたグループにとって使い勝手がいいのがこの「高額洋食屋」の存在理由であると考えます。
しかしこの先、本場物に近いフレンチやイタリアンを食べなれ、CPにシビアな若者が年配になってきたらどうなるんでしょうか。10年とは言いませんが20年先が心配であります。
高額洋食屋の存在意義
厨房スタッフの労働時間について
先日都内のフレンチ(友里は過大評価店と判断)で働いていたという方からメールをいただきました。私の指摘の通り、驕った店だったとのことですが、その労働環境を聞いてちょっと考えてしまったのです。前から気づいていましたが深く考えなかったのがこのレストランスタッフの就業時間を含めた労働条件であります。
はっきり言って、堂々と「うちの店は労基法をしっかり順守している」という店がどのくらいあるでしょうか。たいていの店は週に一回しか休みません。ランチをやっている店でしたら、スタッフは遅くとも9時には出ているでしょう。夜は早くても22時くらいまでか。
仮にスタッフのローテーションを組んでおらず1チームだけでやっていたとしたら、労働時間は週72時間くらいになる計算です。(昼休みなど休憩があったとして)これで、時間外手当や有休が満足に確保されていないとしたら、完全な違反となるわけであります。
メールされた方は16時間無休だったと書いてありました。さすがに無給ではないのでしょうが、想像を絶する労働環境だと言えると思います。
普段、料理が内容の割に高すぎる、手抜きで業務用を多用している、と指摘している友里ですが、CPが悪いと判断される店でもスタッフのサービス残業など過酷な労働搾取で成り立っているとするならば、飲食店のビジネスモデル自体が成立していないことになります。経営者やオーナーシェフへだけ利益が還元されていたら別ですけど。
以前私は「レストランは真面目にやったらそうは儲かる商売ではない」と述べた事があります。連休もそうは取れないでしょうし、余程の人気店でない限り長期休暇も無理。従業員へ充分に配慮して、客にも還元してしまってはまったく残りがなくなるかもしれないのです。
残り(取り分)を多くする手っ取り早い方策は、スタッフをこき使い、調理レベルを如何に下げて見かけだけで勝負するか。また、セントラルキッチン化、マニュアル化して技量のないスタッフ(安い賃金)で対応できるようにする、などなど。多店舗展開もその一つの手段でしょう。
しかしそれらの方策がことごとく客の食後感と相反する結果になるのが皮肉であります。
独立して運よく人気店になると、高級外車や絵画、陶器を集め、他店の調査と称して日々食べ歩いて厨房にあまり入らなくなるシェフがいると聞くことがあります。そこへ行きつくまでの厳しい環境を考えると気持ちがわからないわけではないのですが、客の満足度とのマッチングは非常に難しい問題であると考えます。
「店評価ブログ」を更新しました
サブプライム問題からの信用不安が止まりません。アメリカ、日本と株式市場の暴落が止まらず、売りヘッジを多くかけている方以外は毎日寝つきが悪い日々を過ごされていると思います。この友里もヘッジが足りずやや苦戦、早く市場が回復することを祈るばかりであります。
本が売れず執筆依頼もなくなって株や為替のディーリングでかろうじて生計をたてていたJ.C.オカザワも、この局面でかなりピンチに陥っていると漏れ聞きました。
下がり続けるモニターを食い入るように見つめ続け(そんなに見たって持ち株は上がりませんぜ)、気もそぞろでメールのやり取りも停滞しているとか。ヘッジの売りをかけろとアドヴァイスしていたんですけどね。追証の連続で自己破産しないことを願うばかりです。ブログネタの対象者が一人減るのは友里にとっても痛手でありますので。
さて、「店評価ブログ」に、海外経験がプアだからか、これがロンバルディア料理専門店と勘違いした過食のオコチャマ・来栖けい氏と自称ジャーナリストの犬養裕美子さんが絶賛する広尾のイタリアン「ペルゴラ」と、「ラミティエ」とは比べ物にならない食後感(悪い意味で)だった中野のフレンチ「ガルゴティエ・ササキ」をアップしました。お暇な時にお立ち寄りください。