グラフ社から私とちょっと因縁のある株式会社グレイス(「豚組」や「豚組 しゃぶ庵」を経営している会社)の社長・中村仁氏の本をいただきあっという間に読み終えました。おそらくゴーストライターが書いていると思われるこの本、薄くて口語体なので非常に読みやすい物でした。
「右向け左の経営術」 副題「常識と戦え!」(グラフ社)
http://www.amazon.co.jp/%E5%8F%B3%E5%90%91%E3%81%91%E5%B7%A6%E3%81%AE%E7%B5%8C%E5%96%B6%E8%A1%93%E2%80%95%E5%B8%B8%E8%AD%98%E3%81%A8%E6%88%A6%E3%81%88-%E4%B8%AD%E6%9D%91-%E4%BB%81/dp/4766211669/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1217364501&sr=1-1
中村氏とは、「豚組」や「しゃぶ庵」をブログやコラム(日刊ゲンダイ)で取り上げた際、かなり長文なメールをいただき意見交換(言い争い)をしたこともあるのですが、そのときの印象と同じく、読み終えて感じたことは「この人、やっぱり頭が良くて弁が立つ」であります。
本では高校まで「成績優秀」と自ら著しているのはちょっと違和感を覚えますけど。
本の構成は、「せいざん」(居酒屋で現在閉店)を立ち上げ、立ち飲みブームの奔りとなった「壌」、イベリコ豚のトンカツで名を売った「豚組」、そして「しゃぶ庵」と次々オープンした「成功物語」を時系列的に述べたものであります。
中村氏はB型なのでしょうか。その性格がかなり私と共通しております。
まずはへそ曲がり。人と違うことを考える。新しい物好きで飽きっぽい。負けず嫌い。この二人がやり合えば、それはメールが長文になるわけです。
そして現在の飲食業界の問題点を冷静に認識している人。飲食業界の社会的地位の低さの改善(マスコミ露出の一部の人を除いて)を目指すという崇高なスローガンをかかげています。
確かにマスコミやライターのヨイショで祭り上げられた一部の料理人を除いて、この業界に従事している人の労働条件は悪すぎると言えるでしょう。労働時間、休日日数など「拘束時間」を考えたらその収入は見合わないのではないか。
また人と同じ事をやるより違うことをする方がリスクは少ない、という「逆張り」の経営判断、ある意味非常に納得しました。
すべての人が彼の考えを真似て成功するとは限りませんが、判断の引き出しを増やすという意味でも読んで損はないでしょう。(あっという間に読めるので、立ち読みできちゃいそうです。グラフ社さん、こんなこと書いてすみません)
しかし彼は長い道のりの中腹にもたどり着いていないかもしれません。成功したと行っても商売は水物、今後も盛況が続くという保証はどこにもありません。
また、発祥の店「せいざん」(最終店名は「豚組 やきや」)の突然の閉店もありました。厨房施設などに大きな問題が出たからという表向きの理由があるようですが、それならなぜ堂々とこの店の内装を設計した石川純夫氏のコメントを載せているのか。(29ページ)
執筆中に内装の問題が明らかになっているのですから、中村氏への賛辞だけではなく、自身の設計の甘さにも言及していただきたかった。10年持たず危険になったという設計で良いのでしょうか。
集客に苦労していたという「しゃぶ庵」も、先日訪問した際はかなり満席となっておりました。
果たしてこのままその勢いが経営4店で続くか、また新しい形態の店をオープンすることが出来るか、社員の労働条件を向上できるか、それは上場を目指すという2011年には少し答えが出ていると考えます。
グラフ社には出版社の矜持として、2011年以降に再度検証の意味で中村氏の本を出版していただきたいと考えます。
本日は友里征耶の生みの親、グラフ社の宣伝となってしまいました。
えっ、宣伝になっていないって?
これが友里流ですのでご勘弁ください。
読了、「右向け左の経営術」 by グラフ社
「モウラ」更新しております
先日ある3つ星店のランチに行ってきました。原則ランチでは評価しない友里ですが、既に「モウラ」で取り上げている店ですので、気楽に食事をしてきました。
そのときスタッフから聞いたのですが、既に今年4月にミシュランから来年度版の掲載許可の打診があったというのです。格付けも決定しているようだとか。
発売半年前に既に最終評価を下してしまって良いのでしょうか。かなり疑問であります。
京都でも「吉兆」や「ささき」が拒否した、あの店が受け入れた、といった噂を聞きます。
東京での調査を早めに打ち上げて、調査員は京都へ行っているのでしょうか。
これでは来年度版も今年とたいして代わり映えしないものになるかもしれません。
「モウラ」に精進料理の「醍醐」をアップしております。個々の食材を見てしまうと、CPの悪さがすぐわかるのですが、話のタネに1回はいいかもしれません。
ぜひお立ち寄りください。
http://tomosatoyuya.moura.jp/
ミシュランガイドについての考えを変えました
私は昨年から(昨年の春くらいからです)、ミシュランガイド東京版はたいした内容ではないと言っておりました。発売後も「これでは昔からの本国版などのイメージダウン」と東京版だけが「評価がおかしい」というような主張を繰り返していたのです。
しかし、「モウラ」のコメント欄でアンチの方が「合議制」の素晴らしさ?を繰り返し主張されてミシュランを崇拝されていたので、ちょっと考えてみたのです。
どこの馬の骨かわからない、主張や嗜好をまったく伏せた「調査員」と称する人たちが「合議」で話し合っただけのミシュラン評価、本当は100年前の最初からたいした評価ではなかったのではないかと思うようになりました。
私は言っておりませんが、普通この手の店評価や店の記事を書く人は自分の舌の能力を自慢します。マスヒロさん、JCオカザワ、過食のオコチャマこと来栖けい氏、など皆さん例外ではありません。
MSGに寛容なマスヒロさんやオカザワ、そして未だに引っ込みがつかず「入船」が鮨屋で一番と主張している来栖けい氏の舌(評価)が凄いと思う人は、一部の信奉者を除いてそうはいないでしょう。
つまり、ペンネームでもいいのですが、顔が見える(主張や嗜好がわかる)人でも当てにならないのに、顔が見えない(主張や嗜好がわからない)どこの馬の骨かわからない人たちの評価をなぜ信じられるのか。おかしいと思いませんか。
私が思うに、100年前はこのようなガイド本がなかった。その後☆でランク付けしましたが、最近まではそんなガイドはなかった先駆的な本だったので、読者が勝手に「絶対視」しただけではないかと思うようになったのです。世に1種しかなければそれが「真実」みたいに見なされます。
しかし、ミシュランガイドははっきり言えば「どこの馬の骨かわからない人たちの言ったもの勝ち(評価したもの勝ち)のただのガイド本」。
これからピレリー社やブリジストン社が、勝手に「弊社の基準で採用し研修した調査員」なるものを使って主張や嗜好を開示せず「秘密合議制」で評価本を作ったとして、世間でバイブル化されるでしょうか。これほど注目を浴びるでしょうか。
答えはノー。
100年以上、調査員自体の「資質」に対する問題提起をそうはうけなかったのでしょうが、私は東京版だけではなく、本国版含めて実はまともな評価ではなかったのではないかと思うようになりました。
ディスクローズのご時世で、主義、主張、嗜好、出自をまったく明らかにしない人たちの合議、そして行ったこともない人も加わるこの評価システム、独裁国家ではないのですから、完全に「時代遅れ」と考え直した次第です。
こんなシステムで推奨された馬の馬券が買えるでしょうか。(読者の方の意見です) 推奨された株を買うでしょうか。
はずれても被害額が少ない「飲食店評価」なので「生き残れた」だけの欠陥評価システムだと考えます。