最近訪問した店 短評編 15

猛暑が続いています。北極海の氷が観測史上最低のレベルだそうです。温暖化対策が各国の思惑で進んでいないようですが、将来(といっても数十年後という話もあります)大変なことになってしまうかもしれません。その時はもう世にいないから、と各国の首脳、そして国民が目先のことだけを考えているとしたら、その代償は計り知れないと考えます。と言いながら、私も冷房をなるべく入れない(といってもこの猛暑では無理)とか、車を使わないとかしていますが、外食で「マイ箸」を持ち歩いているわけでもなく、何をやっていいのかはっきりしません。アメリカを巻き込んで、世界はもっと真剣に対策を練らなければならないのではないか、欧米は「マグロ」や「クジラ」の数を心配する前にもっとやることがあるだろ、と私は叫びたい。
さて、本日は夏が稼ぎ時の鰻屋「野田岩」とパリ祭の特別メニューを食べた「メゾン ポール ボキューズ」、そして夏には関係ありませんが新丸ビルの「笹岡」です。いずれも昼に訪問しました。
野田岩
しかしこの店の経営者の頭の中がわかりません。街中の鰻屋は「丑の日」のあるこの7月が絶好の稼ぎ場。嬉しい悲鳴をあげているはずですが、野田岩は「丑の日」が嬉しくないのか、わざわざこの「丑の日」に臨時休業するのです。今年は月曜日でしたが立派に休業。他店が必死に頑張っているのを傍で見ながら、「俺んちは普段から儲かっているからいいんだ」とばかりの態度、嫌味というか性格が悪いというか。フレンチがクリスマス イヴにわざわざ休業するようなもので、考えられません。
ほとんど入手していないのに「天然ウナギに拘っている」、「冬は養殖ウナギを出している」とあたかも冬以外は天然ウナギを出しているように偽る「天然偽装」を以前から問題視していましたが、ホント、嫌な考え方をする店であります。
それでも客が連日絶えず、「丑の日」に営業しないでもいいほど稼いでいるのですから、マスヒロさんなどを使った「天然偽装PR」の効果は絶大であります。
当日は白焼きと筏、中串の天然鰻とうな重(養殖)を仲間とシェア。白焼きは肉厚薄くフニャフニャ、パサパサでまったく美味しくないというか旨みなし。箸で食べる際かなり崩れました。筏、中串は時期や獲った場所の問題なのか、脂の乗りが悪く旨みもない。マスヒロさんはじめ色々なライターが「天然ウナギはみな美味しい」みたいなことを唱えていますが、天然より養殖の方が安定していて美味しい場合が多いんです。アメリカ牛、和牛はじめ人の手をかけたものが野生牛(こんな牛いるか)よりおいしく感じるものがあるはずです。何でも天然がうまいという「天然神話」を私は信用しません。
メゾン ポールボキューズ(元シンポジオン)
昼でしたが夜のメニューである「パリ祭特別料理」(12000円)を食べました。
オマール海老のサラダ仕立 トリュフ風味 ソース・オロールは何のことはない、オーロラソース、つまりサウザンアイランドがかかっているだけ。トリュフも気がつかないほどの少量。トリュフのスープ  スペシャリテだそうですが、味が濃い割にトリュフ自体の風味が決定的に欠けています。真鯛のロースト ポルトガル風 はしょっぱいだけのトマトベース。傑出さをまったく感じません。牛ほほ肉の赤ワイン煮込みもペッパーきかし過ぎなだけ。
エシレのバターは400円追加ですし、なんかすっきりしません。週末のバンケットがメインターゲットなのでしょうが、「ボキューズ」の名に釣られてわざわざ訪問するほどの価値があるか疑問であります。
笹岡 新丸ビル
恵比寿で評判だった和食との触れ込みですが、主人は「菱沼」の出身ですからどうなんでしょうか。
恵比寿の店は営業していないようで、笹岡氏は双子の兄(弟?)と新丸ビル店を切り盛りしていました。
3500円のコースはほとんど造り置き。造りのカンパチ、カツオは金額通りのもので山葵は×。
ゴマ豆腐、豚の冷シャブ、コショウダイの南蛮漬け、カボチャやコンニャクの煮物とまったく凡庸。恵比寿の地で安めの和食を提供して人気だった店に多くを期待するのは酷でしょうが、わざわざ目立つ新丸ビルへ移転して何がしたかったのか。かえって料理長の腕を公の目に晒すことになり、マイナスになってしまったかもしれません。日本酒、焼酎の選択肢がなく、ワインをメインにしている営業方針も問題です。

「まっくろう」も1年持たずコンセプト変更か

風水が悪いからか、それともただの偶然なのか、店オープン、店閉店、新店オープンを繰り返す建屋が結構目につきます。当然ながらそのような店は普段から客が少ない。西麻布近辺を歩いていると、そんな場所がなんと多いことか。
中華、ダイニング、スープ屋からついに博多チムそば屋になったビル。相変わらず客が入っていません。その近くの小さなオーガニック料理店、以前はイタリアンでしたがやはり閉店してしまいました。地域が悪いということではないでしょう。西麻布4丁目付近では、「鳥よし」や「すゑとみ」、「アッキアーノ」など割と流行っている店が多いからです。特に「アッキアーノ」は狭い階段で3階まで登らなければならずその立地条件は最悪のはず。かたやチムそば、オーガニックは1階ですからはるかに条件がいいはずです。
やはり風水が問題なのでしょうか。
私は両店とも訪問したことがありますが、風水を問題にする以前の、店のコンセプトに問題があったのではないかと考えます。安ければ良いというのではなく、やはり料理店は「料理」を主役にコスト対効果を客に充分感じさせなければだめではないかということです。安かろう、悪かろうでは客は来ません。
さて、本日の本題。やはり西麻布4丁目、日赤通り近くのバブル的な建屋。私の記憶でも、1階、地下と店が定着せず何回も交代してきました。1階部分は今はドッグカフェとして何とか耐えているようですが、問題は地下部分です。昨年このブログでも取り上げましたが、江川卓氏、アーネスト・シンガー氏の祝いの花が届いてオープンした「まっくろう」。六本木で接待族、業界人などに人気だった同名店(ウシオ電機の関連でした)の関係者を中心にした創作料理店と聞きましたが、1年持たず内装工事に入ってしまいました。なんでもあのやはり業界人に人気の「アッピア」が入るとの噂です。もともとこの「まくろう」もアッピア系ではないかといった話もありましたから、子供の不振にいよいよ親が乗り出してきたといったところでしょうか。
キャンティの流れをくむ「アッピア」、パフォーマンスだけで私は好きではないイタリアンですが、今でも予約困難な店だと聞いております。恐らく分店を出してもその勢いは落ちないはず。世に業界人は沢山いらっしゃるからです。オープンして数か月後、この「第二アッピア」が盛況を維持しているか。もし閑古鳥となっていたのなら、風水の存在を私は信じることにします。
また、「オーグードジュール」の分店「ミノビ」も1年と数ヶ月でコンセプト変更して、創作和食から気軽なフレンチになったこともここにお知らせします。シェフが退職したというのが理由のようですが、それならなぜ同じ創作和食を続けなかったのか。今度のシェフは「メルヴェイユ」のスーシェフだった人らしいですが、やはり創作和食は不評だったのでしょう。

最近訪問した店 短評編 14

すみません。原稿仕上げてアップするのを忘れていました。
毎日暑い日が続いています。全国的にお盆休みに突入しますが、私は何の予定も立てておりません。
巷では、友里もマスヒロさんみたいにランチやB級にシフトしてきて懐が苦しいのではないか、裁判で負けて大きな負債を負うだろう、といった話があるようです。確かに今まではあまり昼食をとっていなかったのでランチのことを書かなかったのですが、最近は昼も食べているので書いているだけであります。確かに苦しい家計ではありますが、夜もしっかり訪問していますのでご安心ください。
去年の8月は「グルメバトル」の原稿で昼夜大変でしたが、今年は9月から再開する「日刊ゲンダイ」のコラム準備くらいですから、結構暇というか楽ですね。
あとここで中間報告をさせていただきたいことがあります。今年初め、新著の話があるとアイデアを募集させていただきました。色々と斬新なプランをいただき、編集者と掲載店の検討に入ったのですが、編集側の都合で一時中断しております。このままボツになるか、復活するか、少なくとも年内の出版はないと思いますので、ここに報告させていただきます。
さて、本日の3店、ランチが2店と日本一予約が難しい鮨屋が1店です。
四川豆花飯荘 新丸ビル
シンガポールにある「四川料理店」の日本進出だそうです。以前フリで13時ころ行って断られたくらい一見盛況のようでしたが、ちょっとした仕掛けがありました。
11時のオープンと同時に店前で待っていた客が入ろうとすると、レセプションのスタッフがいちいち名前と人数を聞いて台帳に記入します。店内は客ゼロなのにですよ。しかもすぐ案内しないで入口の椅子に座らせて待たせるんです。準備ができていないわけではありません、店前に無理に「行列」をつくって人気があるということをアピールする「行列偽装」ではないかと考えます。
店内はかなりの大箱。2800円から5500円くらいまでのコースで、エビチリ、トンポーロ、麻婆豆腐などが出てきます。いずれもディープではない上品な味付け、でも麻婆豆腐も適度に麻、辣がありまして、まずまずでしょうか。
この店の特徴は280円必ずとられて供される「八寶茶」。紅なつめ、クコ、菊花、氷砂糖、百合根、龍眼、ジャスミン茶、プーアール茶の混合で、1メータくらいある長い注ぎ口の急須を振り回すパフォーマンスで注いでくれるのです。勢いよく注がれたお茶はテーブル上へ飛沫がとぶほど。しかし、あの長いものを振り回して、いつか客に怪我人がでるのではないかと思うのは私だけでしょうか。
話のタネに一回は行ってもいいかも。その後に夜も訪問済です。
レストラン大宮 浅草 新丸ビル店
訪問した時期はまだ結構盛況で行列が12時過ぎもできていましたが、現在はだいぶ落ち着いてきたようです。開店とほぼ同時に、デミグラスの限定ハンバーグが売り切れたようで、マスヒロさんと同じタンシチューを頼みました。マスヒロさんは味に深みがないといったマディラソースでしたが、私にはかなり下町チックで味が濃く感じるもの。深みがなくても彼には好みだと思うんですけど、化学調味料が彼には足りなかったんでしょうか。
あら輝 上野毛
非常に久しぶりの訪問です。いつのまにか夜2回転営業になっておりました。一か月以上前に、知人が予約を取ってくれての訪問、結論から言わせていただくとそんなに気合い入れてわざわざ出かけるほどの鮨屋ではありません。
ツマミが7種ほど、握りが10個以上出てきましたが、全員がほぼ同時に右から左へツマミや握りを供されて食べるので、客は養鶏場の鶏みたいな感じです。
星鰈、蒸し鮑、馬糞ウニなど質もそれほどのものではない。酢飯はよく言えば無難、はっきり言えば普通、特徴なくちょっとネバネバしていて、私の好みではない。握りは手数が10手ほどかかっており見た目はいじり過ぎ。洗練さを感じませんでした。
最後の有名なチョモランマ、昔はなかったと記憶していますが、ただの中トロ部分を3個分使った大きな手巻きみたいなもので、質も大したことありません。
ほとんどが常連客なのでしょうか、ネットにもありましたが店内はサロン化していて、客の主人やタネ、握りへの称賛が不自然なほどしつこい。酔いが回り過ぎたのか、「こんなに美味しい鮨は初めてだ、感動した」と突っ伏して涙ぐんでいた男性客もいましたから腰を抜かしました。
このレベルでなんと大げさな。一人2万円弱と昔と比べるとかなり高くなっておりますが、銀座の繁盛店と比べて何ら傑出したものを感じません。
地元の客も結構多いと思うのですが、感動して絶賛している人たち、銀座の「小笹寿し」や「くわ野」、
など有名店へ行って冷静に食して判断したことがあるのか。この店ごと銀座へ持って行ったら、完全に埋没すると私は考えます。勿論2回転営業も挫折するでしょう。
全国から客が訪問するとの話も聞きますが完全な「過大評価鮨屋」。上野毛という「立地の妙」があるだけ、わざわざ一か月以上待って訪問するような鮨屋ではないと考えます。