ネットではかなり評判の広尾(地番は恵比寿)にある「ラ・ピッチョリー・ ドゥ・ルル」。19時から27時まで営業のピッチョリー(バスク地方の一杯飲み屋)で、フレンチ「シェ・トモ」の2号店であります。「ル・マエストロ ポール・ボキューズ東京」も任されていた市川知志シェフが関係するバスク料理店とネットで知り、期待して予約の電話を入れました。
クロスがなくテーブル含めて木がむき出しの内装にBGMはアコーディオンとかなりのディープ感。料理は2枚の黒板に定番とその日のお勧めが列記され、グラスワインは白赤とも10種ほど用意されており、ますます期待が膨らみます。前菜はブーダンノワールやラタトゥユ、豚足ゼリー寄せなどが1000円前後、メインはクネル(1350円)、シュークルート(1900円)、カスレ(2830円)と好きな料理が並んでいるのも嬉しい。と、ここで疑問が生じたのです。おいおい、俗にいうビストロ料理ばかりで厳密な「バスク料理」らしきものが見当たらないではないか。
調理スタッフが少ないのか皿出しは遅いですが、シェアを前提に、フォークとナイフが卓上に豊富にあり、取り皿が都度サービスされるのは評価できます。前菜が小ポーションなので支払を考えなければ多くの料理にチャレンジできるのも嬉しい。しかし肝心の料理の味は疑問な皿が続きました。ビストロ料理はワイルドというかしっかりした味付けが基本でしょうが、あまりにしつこい味の料理が多く、食べ続けていくとつらくなるのです。好きなリエットも進みません。ラタトゥユ、オムレツも後味がつらい。シュークルートもしかり。カスレはスープが多く味も濃すぎるので鴨コンフィの旨みを打ち消しています。ハモンイベリコも小さい欠片でしたから部位が悪かったのか。反面、ブーダンノワールやクネル、ポテトグラタンは特徴がなかった。
うーん、全体に必要以上に舌に残るというか、まるで業務用の出汁や調味料を使用しているかのような食後感でありました。店内は若い客ばかりでしたからこの味付けでいいのかもしれませんが、もう少し味に深みが欲しいものです。
6000円前後のフランス南西地方のワインを飲んで一人1万円突破。確認のため再訪しましたが、食後感は変わりません。