今や伝説の鮨職人に祭り上げられてしまった新津武昭氏。
上野毛から銀座、そして今度はロンドンへの移転を狙っている3つ星「あら輝」の師匠としても有名ですが、その伝説の舞台となったのが「きよ田」でありました。
単なる雇われ職人だったはずですが、酢が嫌いで魚も食べられない鮨職人(歳とってからようやく鮪の赤身が食べられるようになったとか)を全面に出したのが大企業年配雇われ社長たちに受けたのでしょうか、政財界のお偉方のたまり場になっていたと聞いております。
当時の「きよ田」は敷居が高くて未訪の友里、引退後に西麻布の「青木」の小さなカウンターを借りて限定営業する新津氏と何回か相対して感じたものそれは、肝心の職人技は別にして、そのトークが「爺殺し」の秘訣だと確認したのであります。
年配雇われ社長に惜しまれながら若くして引退したので店を閉めざるを得なかった「きよ田」、このまま消え去るのは惜しいと考えたのでしょうか、取引していた鮪の仲卸の仲介で柏の鮨店(現店主)に声をかけて再開を果たしたのであります。
ただし屋号や場所は同じでも経営が変わりましたから、当初は「新きよ田」として再スタートを切りました。
そして往年の「きよ田」に勝るとも劣らないとの自信が出たのか、いつの間にか店名から「新」をとって現在に至ったと友里は漏れ聞いております。
この店の一番のウリは鮪。
鮪の仲卸が再開に関与しただけあって、友里が知る限り東京の鮨屋では最高質の鮪を常備。(つまり日本で最高質となります)次郎はじめ多くの3つ星が用意している鮪とは比べものになりません。
初競りで話題の何とかの1つ覚えの大間鮪に拘っているわけではなく、季節によって産地を選ぶのは当たり前。
良く鮪の質を見るには赤身が一番と言って赤身ばかり食べる自称鮨通がいます。確かに質の良し悪しが赤身の食後感に直結しますし、中トロやトロなどサシ入りを好まない脂嫌いの人(友里も好きではない)も多い。
でもこの店のトロ系は、例え大トロでもしつこくなく赤身と同じく酸味というのでしょうか、深い味わいがあるのです。
それを如実に裏付けるのは6月でしょうか。この時期は近海生鮪不毛といわれるのですが(赤身でさえ味わいが薄い)、佐渡近辺で揚げられるこの店の鮪は他店とはまったくの別物。
機会があったらぜひ試していただきたい一品であります。
高質タネは鮪だけではありません。光りものから白身、貝類と、最高質とは言えないまでも東京のトップレベルであることは間違いない。(鯛は関西トップの店には負けます)
但し良いところばかりでないのは世の常。まずは紹介制という敷居の高さと、タネの種類がチト少ないのが難点か。
そして支払額も東京最高峰。シャンパン持ち込んでも、店でビールや日本酒をたらふく飲んでも一人4万円をチョイ突破するのではないでしょうか。
伝と予算がある方のみの限定オススメとなりますが、この店の鮪含め他ツマミと握りを試していただければ、目から鱗となるでしょう。
特に大阪人(関西人も)に鱗を落としてもらいたいと最後に付け加えさせていただきます。