確かに握りは沈んだけれど・・・、はしぐち

誰が言い出したか「沈む鮨」として鮨好きの間で評判の紀尾井町「鮨 はしぐち」。果たして握りが沈んで良いことがあるのか疑問の友里は、初めて今年訪問しました。
わずか6席のカウンター、主人と女将だけの小さな鮨屋。他の人気店と違い、ショーケースがあるのには驚きました。
まずはツマミからスタートです。生の真子鰈、まずまずの質ですが供された肝醤油で食べると白身の味がわからなくなります。ショーケースにあった殻付き生トリガイの軽い炙りや中トロ、トロの照り焼きもまずまず美味しい。ただ、〆た鰈はここまで昆布の旨みをつける必要があるのか疑問。玉子焼きも標準レベルでした。
そして楽しみだった握り、確かに主人が置いた握り鮨はちょっと沈むように見えます。沈むほど柔らかい握りだということでしょうか。米酢の酢飯はさほど特徴なく口中でほどける感じもしませんが、タネ質を邪魔することなくバランスは良い。ただ握りの手数がかなり多いのが気になりました。また主人の掌の大きいこと。未だかってこれほど大きな手の鮨職人をみたことがありません。カウンターに座り、主人の大きな掌でかなりの秒数握り続けられる握りを見るのはちょっと苦痛であります。握りの技術を語る際、柔らかさ、形状に加えて手数の少なさも大きな要素となります。形成しながらも如何に掌でいじくる時間を少なくするか、東京の名店と言われているのですから、「沈む」より手数の減少に力を入れていただきたいと考えます。
コハダ、カスゴなど塩が緩めで好みが分かれるところですが、この酢飯に相性は悪くはない。ウニ、貝類なども最高レベルとは言えないまでも総合的には標準以上。穴子のツメが甘すぎる、タネ質が少ない、と友里にはドンピシャリな鮨屋ではありませんでしたが、支払額を考えるとその食後感はかなり良かった。その日のタネ数などで支払額がぶれますが、ビールにかなりの日本酒を飲んで平均すると一人2万円数千円です。銀座でこれほど「鮪系」を多く食べると3万円は突破するでしょう。好みが割れる〆物に比べて貝類は誰もが認める美味しさ。寡黙な主人に気がきく女将のサービスと、接待ではなく個人利用には充分満足いく鮨屋であると考えます。キャパがないだけに、利用人数は2名が限界です。