一説には「日本一予約の取りにくい鮨屋」だとか。「東京一の鮨屋」といった絶賛も耳に入ってきます。確かに2回転時間制限入れ替え制営業の夜は、数か月先しか予約が入らないので「日本一行きにくい鮨屋」であることは間違いないでしょうが、肝心の鮨はどうなのか。数年ぶりに訪問した友里の結論は、やっぱりただの立地の妙に後押しされただけの「過大評価鮨屋」でありました。
主人の荒木水都弘氏、鮨好きの新聞人・早瀬圭一氏の著書によると「水都弘」は本名ではなく当て字だとか。タレントでもない鮨職人が当て字を使うというその発想、いやその「勘違い」に驚きです。
カウンターに横一列に並んだ客が供される同じツマミや握りを同時に食べ続ける様は、養鶏場の鶏と大差ないではないか。傍で見ると滑稽なだけです。
完全お任せのコースですが、星鰈、蒸し鮑、馬糞ウニとアイテム立派ながら質はどうってことない。自慢の赤身、中トロ、トロ、蛇腹のマグロ4連発も時期的な問題もありましたが質イマイチ。名物の「チョモランマ」、中トロ部分を3巻分使った大きな手巻きなのですが、そう有難がるものでもありません。中トロさえあれば家でも出来るレベルです。煮ハマ、シンコ、蒸し鮑、ヅケなど江戸前仕事がイマイチなのは師匠と言っている新津氏の負の面を受け継いでいるからか。玉子焼きどころか、白身の〆物や青魚もなく、これで江戸前鮨なのかと大いに疑問。酢飯も米が違うからか、握りの手数が多すぎるからか変にネバネバしていて駄目出しです。
店内は常連客主体で妙にサロン化して絶賛の言葉が飛び交っています。酔いが回ったからか「こんな美味しい鮨は初めてだ」と突っ伏して涙ぐんでいる客もいましたから、一種の洗脳・新興宗教状態に陥っていると考えます。こんなへりくだった客だけを相手にする職人に進歩なし。江戸前仕事が少ない訳です。上野毛という立地の妙による過大評価職人、銀座など激戦地への移店の噂を聞かないのは、このままではまったく通用しないと本人もわかっているからだと思います。最寄駅からタクシー使って一人2万円前後の江戸前仕事の少ないこの自称江戸前鮨。数か月前に予約して遠方から訪れる鮨屋ではないと考えます。