関西の食べ仲間から大阪飲食業界のボス的存在と聞いた森義文氏の創作料理店。
あのエル・ブジのフェラン・アドリアに「このレストランのためだけに大阪に来る価値がある」と言わしめるほどの有名店でありますが、サプライズ料理の無理な発案に疲れ果てて店を閉めたフェランシェフ、「すきやばし次郎」は未だ許せるとしてあの「バードランド」の焼き鳥も絶賛していましたから、彼の評価を信じる人は少ないのではないか。
大阪では珍しい食材はまず森シェフに献上されるとの話も聞きまして、友里は10年ぶりに再訪を決心したのであります。
予約時刻は2回転目の20:40。直前でないとドアが開かず入店できないシステムは健在でありました。
コースのスタートはナイアガラという自称甘口ワイン。友里には発酵を早期に止めただけのブドウジュースにしか思えなかった。食前にこんな甘いものを飲ませたら、食欲が一気に落ちるではないか。コース料理の総量を抑える高等戦術かと疑がわれても仕方ないことでありましょう。
続く前菜は白アスパラにホタルイカを乗せた4片。
ホタルイカに加えて石垣島のラー油やタスマニアの粒マスタードなど味濃い調味料の添加で、肝心のアスパラの質(味)がわからなかった。
八寸に見立てた6種の小皿料理もイマイチ。
例えば先端牡蠣、3~4ヶ月の促成栽培、もとい短期間養殖なだけに牡蠣本来の旨みなし。
なぜノレソレに文旦(甘めの柑橘)を入れるのか。ナイアガラジュースの選択といい、もしかしたら森シェフは下戸ではないかと思った瞬間であります。
海老とキャベツに醪味をつけるなど、大阪(関西)の濃い味嗜好もしっかり取り入れておりました。
ネットでも絶賛のシューカレー、友里には単なるカレーパンにしか思えず、カチョカバロ(吉田牧場)の磯辺巻きもどうってことなかった。
そしてこれまたウリの唐墨10割蕎麦。
他の客もご多分に漏れず絶賛していましたが、我々にとっては単なる唐墨味のベチャベチャ蕎麦。蕎麦ではなく延びた饂飩の食感でした。大阪人はこんなものを「蕎麦」と信じているのでしょうか。
文旦の皮を裏返した容器に入れたキンキ、アワビなどのスープ仕立てに、揚げているような食感のフカヒレソテー、これまた関西人しか理解できない味濃すぎの調理であったのです。
春菊のスープも鶏ブイヨンが強すぎて肝心の春菊の風味が消されておりました。
そしてこの店一番のウリのメイン、牛ロースのミルフィユ仕立ての登場です。
薄いロースの5枚重ねが3片でてきましたが、一番目立ったのは質悪いと思われる油の焦げた匂い。こりゃダメだ。
そして温玉?が入った空豆ご飯で〆となったのであります。
一見珍しく感じる食材(産地)や調味料で単に濃く調理しただけの創作料理のオンパレード。
ワインをボトルで頼んだら一人当たり軽く3万5千円超えとなったカハラ。
濃い味好きでない限り、話のタネにも訪問する必要はないと考えます。