これではオストラルの二の舞になる、ラ トゥール

夜逃げ同然に店を閉めてしまった交詢ビルのフレンチ「オストラル」。こんな再開発ビルへ移転せず、小さなビル地下で営業を続けていたら結果は異なったと思いますが、その跡をほとんど居抜で借りて昨年10月末にオープンしてきたのがこの「銀座ラ トゥール」であります。店名の通り、日本の「トゥール・ダルジャン」から独立して2店舗運営していた料理人が、神楽坂の店を弟子に任せ、千駄ヶ谷の店を閉めて勝負をかけてきました。コンセプト失敗で集客に苦しむ店が多い交詢ビルで、シェフは本当に採算あってオープンしたのでしょうか。友里は昼夜訪問し、料理は別にして戦略失敗、このままでは「オストラル」と同じ結果になりそうだとの結論に達しました。
まずはこのシェフ、センスが悪すぎ。公式HPは「大田原 牛超」と同じく、TVや雑誌への掲載を訴える宣伝が見苦しい。
高級感がありません。アラカルトもありますが、その中からチョイスできるのでほとんどの人が選ぶプリフィックスは、1万2500円、1万5000円、1万8000円の3コース。選べる料理数などが異なるだけですが、そのコースのネーミングが、「ジョセフィーヌ」、「ナポレオン」、「ルイ14世」ですから、笑ってしまいます。
ワインも高い。グラスシャンパーニュはテタンジュのノクターンが2400円。値付けも高すぎますが、1500円前後のものを1種は用意すべきでしょう。しかも昨晩の抜栓なのか泡が弱弱しかった。ビールを置いていないのは粗利の取れるシャンパーニュを頼ませる戦術なのでしょうが、あの「ロオジエ」でもあるのですから再考してもらいたい。スティルワインも白は33万円、赤は28万円までありましたが、この店の料理や雰囲気で飲めるものではありません。中には安い値付けのワインがありましたが、コンセプトを統一するべきです。
牛乳から造ったというパンは美味しい。料理は盛り付けは鈍臭く、ソースや調理法も斬新さがないですが、それがかえって今では珍しく悪くは感じません。料理やワインを、店の雰囲気に合わせて身の丈に応じた価格設定にしたら、客は来ると思うのですが、このまま高額路線を突っ走るならば、「オストラル」の二の舞になる可能性大と考えます。