ファミレスより大箱でクオリティが保てるのか、ミュゼ

日本で一番流行っているフレンチではないでしょうか、「ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ」。新国立美術館内と注目される立地条件で180席強の大箱ホールは、ランチを入れて一日に3回転はしています。フランス料理界の重鎮で3つ星シェフのポール・ボキューズ氏と日本人初の1つ星シェフ平松氏率いるヒラマツグループのコラボレストラン。巷ではリヨン以外ではじめての出店と言われていますが、これは友里に言わせると「詭弁」そのもの。30年ほど前には銀座に「ポール・ボキューズ」というレストランが立派に存在、最近も客が入らず閉店しましたが、アークヒルズに「ポール・ボキューズ 東京」がありました。要は「ブラッスリー」としては初進出なだけであります。
「ブラッスリー」とは軽い食事やお酒が飲める庶民的なフレンチをいうはず。しかしこの「ミュゼ」は美術館内でファミレス以上のキャパ、荷物やコートを預かるスペースがない、狭いテーブルの詰め込み主義、とブラッスリー以下の環境やサービスなのに、夜はアラカルトで前菜が1800円、メインは3000円前後とそこらのフレンチ顔負けの高額設定であります。
30分前に並んだ私は、オープン直前のスタッフの言葉に驚きました。「本日から1800円のコースをやめ2500円だけになります」。高いコースに絞っても客足は落ちないと強気に出たのでしょうが、ランチ2500円でブラッスリーと言えるか。昼に唯一頼める単品スペシャリテ「トリュフ 卵の皿焼きフォアグラ添えソースペリグール」は、目玉焼き2枚を深皿にいれ、小さなフォアグラ角切れとスライストリュフ、ツメの緩いペリグーソースをかけて焼いただけのもの。これが4500円はあまりに高い。もっと手間をかけた料理を安い価格で提供しても客が少ないフレンチに失礼というものです。国立の建屋への出店は審査も含めて厳しい条件があるはず。平松氏の政治力は調理力のはるか上を行っていると考えます。ランチはともかく夜ならワインを飲むと1万円を軽く突破してしまう自称「ブラッスリー」。コートやバッグを足元に置く、誰が造ったかわからない大量生産料理、周りを見れば180名とファミレス状態、貴方はそれでもボキューズの名に釣られて食べに行きたいですか。