「くろぎ」に押されて埋没気味だが食後感はまずまず、新ばし笹田

最近評判の予約困難な高額和食店、リストアップされたそれらの店に石投げると京味出身にしか当たらないと言われるほど京味グループ全盛の東京和食業界。

花板を勤めた料理人が独立したのなら未だ理解できますが(でも京味では煮方を任される前に花板になるのでお椀含め煮物を習得しているとは限らない)、どの部門で何やっていたのかわからない人、修業歴が数年にも満たない腰掛けの人などによる自称「京味出身」まで増殖しているのが現状であります。
それほど新橋本家の東京和食界に対する影響力が強固だという証左でありましょうか。

残念ならがこの3月で打ち切りが決まったというフジTV「アイアンシェフ」の和の鉄人に抜擢された「くろぎ」の超予約困難度(リピーターでも半年以上先でないと予約が入らない)を挙げるまでもなく、年配客中心の「井雪」から果ては昨年独立したばかりの「新ばし星野」まで、予約をなかなか入れられない。
その「星野」にほとんど居抜きで店を譲り、虎ノ門寄りに移転したのが同じ京味出身のこの「新ばし 笹田」であります。

移転してから初めての訪問。噂には聞いておりましたが、店スペースがかなり大きくなっているのに驚いたのであります。

移転前は寿司屋の居抜き。トイレに行くにも一回外へ出なければならかった(席の真後ろから)。
ところが新店は、小上がりらしきものが2つに、8名のカウンターは余裕の一言。奥の厨房もかなりのスペースで、もしかしたら本家の京味より広いかもしれません。
そんな環境で最高値1万8000円コースから松葉蟹とスッポンを抜いたという1万5000円コースがスタートしました。

フグ白子茶碗蒸しはまずまず。セイコ蟹も普通でしたが、壬生菜と揚げのお浸しは出汁に東京の和食としては満足。
ノレソレ(菜の花と唐墨添え)も悪くはなかった。

造りのヒラメ、鮪、ボタン海老(炙り)がイマイチなのは、このコース価格なら致し方ないことか。
海鼠腸とナマコで日本酒が飲みたくなりましたが、値付けが安いシャンパン(NVは7800円からある)を通したのであります。

白甘鯛の焼き物はボリュームがなかったけどまずまず。
オデンのような炊き合わせ(海老芋、京人参、大根など)も東京和食の中では上レベルのお味、そしてご飯(わさび漬け&ちりめん山椒)で〆ての支払いが1万4000円のシャンパンにビールを飲んで2名で5万円チョイ。
直近の訪問でシャンパン飲んでしまって10万円を超えた人気店「松川」の倍は満足した夜でありました。