私は銀座の人気鮨屋「小笹寿し」を訪問する度に、その2軒先にあるこの鮨屋が気になっておりました。暗い短い路地に2軒の鮨屋が共存する不思議。店先にはお品書きがなく一見客も飛び込みにくい雰囲気に、もしかしたら隠れた名店かもと知人と予約を入れたのです。
まずは下見に一人で昼に訪問。カウンター12席、テーブル2卓と思ったより大箱でしたが、なかなか趣がある雰囲気です。客が居なかったのが気になりましたが、ツマミ少々と握りはお任せを頼みました。トリガイ、赤貝、ミルガイをつまみ、握りは2種のタネを一度に出してきます。ピッチが早く、12ケほどの握りをあっという間に食べ終わった請求は、ぬる燗2つで1万5000円超と驚きの高値。このタネ質と支払い額のギャップ、J.C.オカザワ風に表現すれば、「友里征耶、もんどりうって黒房下へ転げ落ちる」。タネはどれ一つ傑出というか上レベルではありません。鮪類はあまりに冷たすぎ。中トロ駄目、赤身も水っぽい。生の鮑、ウニ、干瓢、イクラ、甘すぎの玉子とどれも×。鯛やヒラメ、コハダ、煮ハマ、穴子も凡庸でありました。厚めに切ったタネをお結びのような丸っこい形に仕上げる握りは、地方の寿司屋で見かけるような無骨な形。酢飯も特徴がまったくなく、これで銀座の有名店と変わらない請求額なのですから噴飯ものであります。そして次週の夜に再訪し、更に追い討ちを食らう結果となりました。
夜なので多目にツマミを頼んだのが間違い。一つのタネで3?4切れを分厚く出してくれるのですが、鯛、ヒラメ、鮪は最近の有名鮨屋と質にかなりの差があります。そしてクライマックスの請求額は何と一人2万7000円ではありませんか。銀座でも最高レベルの支払額です。主人も含めて接客は良いし、マスコミに露出していないので迷いましたが、はっきり書かせていただきます。このタネ質、仕事、握りでこの高額請求は、銀座とはいえ「勘違い」のし過ぎ、あまりに世間知らずというものです。どう見ても、1万数千円の価値しかありません。友里は2軒隣の「小笹寿し」へ食べに行くことを主人に提言したい。夜2回転する繁盛店との違いは何なのか、訪問時他に客は2名だけと集客に苦戦しているようですが、その原因がわかるでしょう。