この近辺では勝ち組の一店、鳥よし 西麻布店

一時は盛り返したかに見えましたが、確実に客足が遠のいている西麻布界隈。特に4丁目は苦戦している飲食店が多く、山本益博氏が絶賛した「シェ フィガロ」や「キッチン ヌノ」も閉店。数年間で中華、ダイニング、パン屋、スープ屋とテナントが入れ替わった小さなビルは、現在博多チムそばの店になっていますが、今回も客がほとんど入っていません。そんな中で寿司屋「和心」と共に「鳥よし 西麻布店」は連日満席の繁盛店であります。「麻布食堂」などが入る雑居ビルの地下、しかしアプローチは高級和食の雰囲気で「焼鳥屋」に見えません。店内もやや薄暗く、いかにも隠れ家的なところが業界人や芸能人にも受けているのだと考えます。
この店のウリは、フランスで焼鳥をやっていた主人が帰国して選んだ「伊達鶏」のあらゆる部位を堪能できること。中目黒店の繁盛からこの西麻布店を出し、ついに銀座まで進出しています。
焼鳥屋で一番重要なのは鳥のバラシと串打ちだと業界関係者から聞きました。大手やフランチャイズ店はこの重要な作業を工場で処理、ひどいところは中国でやって冷凍輸入しているとか。いわゆるセントラルキッチン方式ですが、このグループは各店舗でその処理をしているそうです。同じく希少部位を出す人気店の「酉玉白金」では、内臓は別仕入れですから、比較するのも良いでしょう。
単品として普通部位が200円、ちょうちん(卵巣)やせせりといった希少部位は300円からありますが、お任せもあり、希少部位を中心にしたコースも組んでくれます。火入れはそれほど強くなくタレも濃くないので割りと食が進むのですが、部位が大きめなのでお任せでは最後までたどり着かないかもしれません。奥久慈だ、比内地鶏だ、と地鶏、銘柄鶏が珍しくない現在、他店との差別化は希少部位の豊富さです。近くに来たら話のタネに寄ってみるのがいいでしょう。いつも満席に近いので、早めの時刻か入店制限の23時近辺が狙い目。麻布十番の「世良田」には敵いませんが同価格帯の「伊勢廣」や「酉玉」より質、焼き技術とも上。客単価は6000円超ですが、希少部位を食べ続け、6000円のワインを飲んでそぼろ丼で〆たら1万5000円近くになりました。安く上げるなら日本酒に限定してください。