高級食材の羅列に弱い純粋無垢な客専門、小熊飯店

西麻布でミシュラン星付き中国料理店「メゾン ド ウメモト」をやっていた梅本氏が突然店を閉めて海外へ放浪の旅(あくまで噂)に出てしまったのは2年前だったか。

10代で和食の道に入りながら、和食は覚えることが多すぎて20代半ばには独立できないと素早く見切りをつけ、中国料理店へ修行のし直し。
予定通り独立(あくまで自称)して中国料理店のシェフになったのに、その城をあっけなく捨て去ったのですから驚いた人は多かったのではないか。

次に現れる時はどんな変身をとげているかと期待していたら、千駄ヶ谷に1日4名限定の店をオープンしたと聞いて友里、すぐさま訪問したのはいうまでもありません。

店はコンクリート打ちっ放し(地下)の内装と、中国料理とは乖離する雰囲気だったのですが、料理は価格を除いてサプライズなしに淡々と終わってしまったのであります。

2万5000円コース1本勝負。ただし税・サは含入しております。
ワインは値付けが高い(NVシャンパンが1万5000円超)ので、我々は一見お買い得に見える紹興酒飲み放題(ビールやウーロン茶、ミネラルも)を選んだのであります。紹興酒のランクによって飲み放題価格は異なりますが、選んだのは20年陳甕出し(一人4725円)でした。

前菜は7種。名古屋コーチン、高知赤ピーマン、秋田空豆、28日熟成のピータンなど産地や調理法を強調しているけど造り置きですべて可も無く不可もなし。
8時間蒸したとの大仰な説明があったフランス鴨、金華ハム、台湾筍のスープも悪くはないけど傑出さを感じない。
同伴者からは「きょうびラーメンでもそのくらい煮込んでいる」との意見もありました。

3日かけたと説明された青鮫、毛鹿鮫、吉切鮫のフカヒレ姿煮。ポーションはあったけど、深みは感じず本場香港の名店には敵わないレベル。反して唐津の黒鮑は塩が強かったけどまずまずか。

アグー豚や米沢牛タンと頬肉の煮込みもこれまた普通味で、宮崎フルーツトマトと玉子の炒めも甘過ぎで友里の嗜好にはあわなかった。

最後は佐賀天然スッポンスープ蕎麦か十六穀米と大根ピクルスの炒めで〆となったのですが、コース自体は前店と食後感が変わらず世界放浪の効果がでていないと感じたのであります。

20年もの紹興酒もヘタっていて美味くない。
支払額は一人3万円弱もあり、高級食材名や産地名という上辺の言葉だけで満足してしまう純粋無垢な人を除いては、オススメできない店というのが、友里の結論であります。