銀座の有名鮨屋「きよ田」を出る際気がついた向かい側の小さな店、天冨羅 いわ井。かなり前からオープンしていたそうですが、まったく知りませんでした。何となく良さそうな気がしまして、まずは昼に飛び込みました。
カウンター10席の主人と女将の小さなお店。カウンタートップは化粧版、厨房側の壁はタイル張りと高級感はないですが、店内は整然と片付けられており清潔感も上々。「みかわ」とはえらい違いであります。昼の定食は、3150円、5250円、7350円のコースの他、2625円の天丼があります。何回も訪問できないのでまずは最高値のコースを注文。削りたての鰹節をかけた小松菜煮浸しの後、天麩羅がスタートします。海老2尾、冑も2つとこの価格にしては量も質もまずまず。キス、ホタテとレア気味で揚げるのは友里好み。反対にユリネはかなりしっかり火を通していました。穴子もしっかり。当たり前ですが、「みかわ」のように色々なタネをごっちゃに揚げていないのでタネ毎に揚げ管理が出来ています。主人は「天一」出身とのこと、客を詰め込み回転させて利益を優先する営業をしなければ、まともな天麩羅を提供できるという証左であります。特にこの店のウリは野菜でしょうか。シイタケはかなり立派、アスパラ、レンコンと分厚く食感もあり、しし唐は香りも良かった。かなり満足したのですが、期待して訪問した夜では肩透かしとなりました。
コースもありますが、店を信じて「お任せ」をオーダー。つぶ貝山葵漬けの小鉢の後出た海老は、昼と同じく2尾。海苔で巻いたウニ、牡蠣、鮑と高級食材はまずまず。途中に出る「萩の鮪」のヅケの必要性に疑問を感じながら、追加の形で山牛蒡、穴子、ユリネ、イカを頼んで〆は天丼でしたが、支払額が一人2万円を軽く超えたのに私は驚いたのです。料理だけで一人1万7000円前後の計算。これならば、「楽亭」で刺身(4000円)を追加した最高値コース(1万2000円)の方が安いではないか。東京屈指の名店より高いのはおかしい。いくら野菜が良いとはいっても、刺身の量も少なく「お任せ」でも1万3000円前後にしなければ食後感が良くはならない。天丼のタレがやや甘いのも気になるところですが、この店の有効な利用法は昼のコースに限ります。