「俺のハンバーグ」や「俺のおでん」とは別形態の廉価チェーン店。ブックオフの元創業者が仕掛けた、新形態の立ち飲み(正確には立ち食い)自称フレンチであります。
「ガイアの夜明け」で大々的に宣伝されたからか、1階立ち飲みスペースは16時オープンと共に客が殺到して1時間待ちもざらとか。2階のテーブルスペースは2時間ごとの予約制(実際は1時間40分ほどで退席)であります。
この店のウリは、フレンチらしき料理をボリュームたっぷりに居酒屋並みの値付けで提供すること。前菜は600円前後、メインは1000円前後が主体で客単価は高くても4000円くらい。そしてもう1つのウリが豪華?なシェフとサービス陣。
店前には、シェフ3人、ソムリエ3人の大きな写真と肩書きキャッチが目立ちます。
スーパーシェフ、フレンチ界の貴公子など大仰なうたい文句でありますが、いずれの料理人も「シェ・松尾」出身。
本当にスーパーや貴公子だったら、「シェ・松尾」が集客に苦しんで破綻するわけがないではないか。
行列を造っている人たちの出で立ちはサンダルや短パンの男性とそれに準じた女性。外観だけで判断すると怒られそうですが、普通のフレンチ、いやビストロさえも普段まったく縁がない方々が、TVに釣られて
今日は和民ではなくフレンチにしようや
と並んでいるだけと推測しました。
サービス陣のキャッチも驚嘆の一言。ソムリエ界のサラブレッド、銀座のファンタジスタと本人たちはこんな呼称を気恥ずかしいと感じないのか。
20年近く一応ソムリエ資格を持ち、東京のフレンチを人一倍食べ歩いていると自負する友里でありますが、ファンタジスタやサラブレッドの存在をまったく知りませんでした。
それでは料理について。前菜だろうがメインだろうが、スタッフは出来たものからどんどん持ってきてしまいます。ひどい時にはテーブルに皿が乗りきれず、手で持って食べなければならなかった。
メインは最初に1回だけのオーダーだと規制して、前菜より先にウリの牛ヒレロッシーニ(1280円)が出てくるのは納得出来なかった。
肝心なお味ですが、すべての皿が甘い味付け。焼き肉でも炭酸飲料を合わせる最近の若者や居酒屋専門客をターゲットにした調理と読みました。
まともなフレンチ好きはせいぜい話のタネに1回だけ、肝心の居酒屋客もリピートは難しいのではないか。かくして3ヶ月に1回はTVに露出し続けることが、このビジネスモデルを維持する唯一の策と考えます。