マスコミに露出していない宝町駅近くの鮨屋。CPが良いとの読者のおススメで知りました。初訪問は飛び込みで昼、雑居ビル1階のドアを開けると客はほとんど居ません。カウンター10席ですがテーブルが7卓と、女将と二人だけにしては大箱なのが意外でした。主人は与志乃出身なのであの「次郎」とは兄弟弟子の関係になりますが、まったく威圧感ないおとなしい人。「次郎」も含めて「水谷」、「松波」など兄弟弟子の店は「高価格」が特徴なのに、なぜCPが良いと言われるのか。ツマミを一口食べてその理由がわかりました。タネ質がそれほど高くないのです。夜1万5000円以上の店を高額鮨屋と位置づけるならば、その中では平均レベル。人件費もかからないし、地代も銀座より安いはずなので、安い値付けが出来る条件が揃っているのです。
コハダ、煮ハマ、煮穴子、玉子と江戸前仕事のアイテムはありますが、ヅケや白身の〆物には出会えませんでした。酢飯に兄弟弟子と違って赤酢を使用していたのも意外。握りは丸っこくて洗練さを感じませんが、ツマミと握りをお好みで頼み、ビールにぬる燗で1万数千円と予想通り銀座価格よりかなり安かった。
夜の予約電話で変わったシステムを知りました。予約は受けるのですが、カウンターは来店順で保障できないというのです。場合によってはテーブル席になるとのこと。昼の状況から夜の満席は考えられませんでしたが、高額鮨屋でテーブル席に着くほどつまらないことはありません。当日は連れを急かして早めに駆けつけ、年配の男同士やカップルなど比較的年齢層の高い客が居ましたが無事カウンターに座ることが出来ました。ツマミは鮨タネ主体で、4切れづつと豪快に出してきます。「お任せ」はなく「お好み」1本は、今趨勢の高額鮨屋に慣れた客には面倒くさいか。握りも何も言わなければ2貫づつでてきますから注意が必要です。ツマミを食べながらぬる燗でいい気持ちになってふと周囲を見回すとテーブル席まで満席状態。主人はテーブル客用に、別のタネ箱からあらかじめ切り置いた鮪をせっせと握り続けていました。カウンターとはタネが違うようです。
ツマミ、握りとしっかり食べてお酒を飲んで1万円台後半の支払い。高額鮨屋への入門店としておススメします。