勘違いは料理人に限ったことではありません。たまにマスコミに露出する古川修氏もしかり。日本酒、蕎麦、和食を極め、そこらのプロより美味しい料理が造れると自慢する思い込みの激しい年配の「副業ヨイショライター」で、東大工学部を卒業し、ホンダに勤めて芝浦工業大学の教授に就任した自称食通であります。鱸や鯛、若布を扱う村公一氏を日本一の漁師と煽り、西崎ファームの鴨、秋鹿や宗玄といった日本酒の宣伝文句を何の検証もなく垂れ流しまくる「癒着ライター」でもあります。私も理工系を修了しメーカーに勤めていた経歴があるので断言できるのですが、理工系の先生や学生、そしてメーカーは上から下まで世に言うグルメ、食に拘る外食好きは皆無に近い。周りは素人同然ですから、誰でもちょっと外食巡りをして薀蓄を語れば「グルメ」と評判になるのです。いわゆる「井の中の蛙」状態なのですが、教授になって「先生」と祭り上げられた古川氏が、経験の浅さを自覚せずに普通レベルの店や食材を読者に薦めるからその罪は重いというもの。この「銀座 こびき」も不自然に絶賛していたのでその検証に訪問しました。
彼が食べたものと同じ料理に挑戦。天才漁師の鱸は熟成しすぎでパサパサ。旨みの抜けた〆物みたい。後を引く味わいという子持ち鮎の有馬煮は、甘露煮と粉山椒の濃い味付けに助けられただけ。マツタケフライも口中に溢れる香りなんかありません。恐らく丹波物などと比較したことがないのでしょう。すべてが居酒屋料理の範疇ですから傑出するものなし。〆に絶賛の握り寿司も食べましたが、生姜は甘すぎ、酢飯も駄目でバランス非常に悪し。魚の質が並で仕事の腕もありませんから、街場の寿司屋にも劣るものでした。この店には彼が宣伝しまくっている「宗玄」と言う日本酒があるのですが、この会社はタレントの「魚住りえ」とのコラボの日本酒を売り出しているのですから、その志は知れているというもの。こんな浮ついた醸造元が素晴らしい酒を提供できるのでしょうか。中庸なタネ質を中庸な調理レベルで提供する「こびき」。客の食べ具合に関係なく次々と料理を持ってくるのでテーブルは皿で溢れかえります。客の事を考えないこんな店、1万円前後払って、わざわざ行く必要はありません。