ツマミと握りが驚くほど豊富、すし匠 斎藤

この7月にオープンしたばかりの赤坂の鮨屋。店名から四谷の「すし匠」系列であることがわかります。主人の斎藤氏は一時期NYの鮨屋でも働いていたとのこと。靴を脱いでの掘りごたつ式の白木のカウンターは余裕の配置の10席ですが、私は一々靴を脱ぐこのスタイルが好きではありません。面倒ですし、衛生的な面でも問題があるのではないか。
この店の特徴はなんと言ってもツマミの豊富さでしょう。兄弟弟子の西麻布の「まさ」と同じく、ツマミの合間に握りを出してくるスタイルで、酢飯は赤酢と米酢の2種を用意し、〆ものには赤酢の酢飯、その他は米酢の酢飯で握ってきます。乳児連れの若い夫婦にも門戸を開放する懐の深さもあります。
まずはカスゴの赤酢の酢飯握りでスタート。初っ端が握りという客の意表をついた仕掛けに驚きました。最終的にはツマミが20種に握りが10貫ほどでしょうか。記憶をたどっていくと、よくまあこれほどタネを揃えていると感心しました。ツマミで記憶に残っているのは鮭児。その希少なタネに鮨屋では初めて遭遇しました。昆布出汁に漬けた海水ウニ、カワハギ肝醤油、粒牡蠣、毛蟹など業界人、芸能人が喜ぶタネもあり、藁で燻した松輪の鯖、佐島の蛸、大間の鮪(たった1切れ)などブランド産地のタネもミーハー客対応で揃えています。浅草や銀座の老舗の江戸前仕事とは違う創作ツマミが主体ですが悪くはありません。アサリの小丼も最近は珍しくありませんが女性客には受けるでしょう。楽しくお酒がすすみます。
握りはやや小ぶり。ツマミが豊富ですから総量を考慮しているのでしょう。
如何にして多くのタネに最大公約数的に合う1種の酢飯を造り上げるかが職人の腕の見せどころであり、タネに合わせて一々酢飯を変えるのであればその苦労はいりません。私的には2種の酢飯を使い分けるパフォーマンスの必要性を感じませんが、一般には結構評判のようです。
接待よし、業界人よし、中年カップルよし、子連れよし、酒飲みよし、とあらゆる客層に対応しているタネ数豊富な鮨屋。赤坂という立地の割に、お酒をかなり飲んでも2万数千円という支払いもあり難い。最上級のタネ質ではないですが、一度は試されることをおススメします。