いつの間にか宮廷料理に変身した、銀座 南漢亭

相変わらず集客に苦しむ交詢ビルのレストランフロア。荻窪の韓国料理屋の支店の位置づけであるこの店も、「こんなはずではなかった」と頭を抱えているでしょう。交詢ビルオープン当時、マスコミの宣伝記事で私は「南漢亭」が「韓国宮廷料理」に「変身」している事を知り驚きました。荻窪の本店で食べたのは15年前くらいでしょうか。評価基準が明確でないシーラカンス評価本「東京いい店うまい店」で高評価されているのを見て食べに行ったのです。記憶はかなり薄くなりましたが、食べたのは焼肉主体。本でも焼肉が旨いとされていたはず。ユッケ、タン塩、カルビといわゆる「焼肉料理」を食べまくったのです。焼き肉以外の料理があっただろうか。ネットにあった11年前の「辛ミシュラン」取材関連の書き込みでは、荻窪の店は「韓国家庭料理」として紹介されていました。それがヤフーグルメなどでは「韓国宮廷料理の草分け的な店」として紹介されているのです。おいおい、15年前は焼肉主体だった店が韓国家庭料理を経てなんで宮廷料理の草分けになれるんだ?銀座出店でどさくさにまぎれて変身しただけではないか。
ダイニング系と間違う内装はまったく韓国料理とミスマッチ。昼はいくらか客がいるようですが、我々が行った平日の夜は他に2組しかおらず悲惨そのものでした。1万円の「宮廷料理コース」は春雨、人参などの和え物の雑菜、松の実粥、ナムル数種、九つの小皿に盛られた具をクレープみたいな皮に包んで食べる九節板(クジョルパン)、肉、魚、野菜を煎(ジョン)にして牛スープで煮る神仙炉、チジミ、プルコギ、参鶏湯にデザートで成り立っています。各皿の量は少ないですが、後半のスープ仕立てが効いてきて最後にはお腹一杯になります。しかし、このラインナップが「宮廷料理」と言えるのでしょうか。確かに神仙炉をはじめ味は悪くありません。しかし、人気TV番組「大長今」に出てくるような料理をイメージしていた人にはまったく期待はずれ。この程度の料理ならば、他の韓国料理屋でも出会えるものです。珍しくもなんともない。交詢ビルの集客力のなさに加えて、この1万円という韓国料理にしては高い値付けも後押しし、オープン以来閑古鳥が鳴き続けているのも仕方ありません。