3つ星和食「小十」の煮方を勤めていた2番手が今年独立して銀座に店を構えたと聞き、訪問したのは夏の終わり。場所は王子製紙向かいの雑居ビル7階でしたが、1階には韓国冷麺の店があり、これから客単価3万円の店へ行こうと気張っていた友里、一気に萎えてしまったのです。
主人と女将の2名の店と聞いていたので小振りな店かと思っていたのですが店内は結構広い。そこに4人掛けのテーブルがわずか2卓。店内は余裕の配置というよりガランとしすぎで落ち着きません。
3名以上なら1組のみ、2名でも一日2組までという変わった営業方針に疑問を持ったのですが、料理を食べ終わる頃にその理由がわかりました。なぜ独立直後で稼がなければならない時期に、客数を制限してしまうのか。おそらくこの主人、段取りが下手というか手早く調理するのが苦手なのではないか。この日は我々2名だけだというのに皿出しのあまりの遅さからの友里の推測です。
驚きは客数制限だけではありません。この店、コースオンリーは仕方ないとして、価格が2万円と2万5000円と修業先と同じ値付けなのです。果たしてその2万5000円コースの食後感、結論から言わせていただくと味濃く疑問の食材の取り合わせもありCPも悪いだけでありました。
まずは茄子やウニの餡かけ。餡の味が小十よりも濃すぎ。イチジクとフォアグラのサンドイッチは、和食として許される食材の取り合わせなのか。お椀の出汁も鰹と塩が強過ぎです。本当に小十の煮方を張っていたのか疑問を持ってしまいました。
アズキハタやヨコワの造りはまずまずでしたが、続く鱧寿司も醤油味が濃すぎ。
焼き物は大葉オイルの鱸に八角味の岩中豚。味的には普通でしたが、この取り合わせにも大いに疑問であります。またまた味濃い炊合せ(カボチャや冬瓜、小芋)に続いて〆の琵琶湖の天然鰻、おそらく皮側に水をかけながら焼いたのか、直焼きと比べて食感が物足りなかった。
和食屋としては立派なワインリスト(値付けは高くない)に釣られてシャンパンを頼んだのですが、料理の味が濃すぎてそのシャンパンが進みません。
味濃く食材の取り合わせも疑問で、皿出しも遅い。私の嗜好とはまったくかけ離れたセンスは変わらませんから、友里の再訪はあり得ません。