低温調理は揚げ物でもダメだ、蘭亭ぽん多

オススメ本(大震災で出版延期)で掲載するトンカツ店が見つからず焦っていた友里。人からオススメを聞いて訪問しては落胆というパターンを繰り返していたのですが、この店も例外ではなかった。湯島で予約困難な人気和食の主人から「修業先のオヤジさんを連れて行く」聞き飛びついたのですが失敗でありました。

ぐるなびに生ビールのクーポンがあったので嫌な予感はしたのですが、しっかりそのクーポンを握って、日頃お世話になっている編集関係者を誘って訪問したのは今年2月。
そのクーポンで出てきた生ビールの小ささに驚き、直ぐさま瓶ビールをオーダーしたのですが、こんなケチなクーポンならわざわざつけるなと私は言いたい。クーポンもダメなら肝心の料理はもっとダメ。店のオススメ料理すべてにダメ出しです。

コールドタン(1365円)はまるで添加物の塊のような味わい。牡蠣フライ(1890円)は塩で食べろと言われたけどソースの濃い味で誤魔化さないと楽しめない質と衣であります。
アスパラ(もちろん缶詰)を乗せたサラダ、廉価な洋食屋にもあるレベルでしたが、これがこの日一番まともな料理だったかも。

事前予約のみと言われたタンシチュー(4935円)は、醤油、味醂、日本酒などで長時間煮込んだそうですが、和風味としても出来はイマイチ。山椒や辛子の力を借りても美味しいと感じない、店主の自己満足料理であります。そのタンシチューの残りでケチャップライスが提供されたのですが、これまたわざわざ食べる必要がないものでした。

そして今回のメイン、特製とんかつ(3570円)の登場です。店主は100℃の低温で揚げたので「肉汁が出ていない」と自慢していましたが、最初から肉汁が存在しない肉ではないか。
衣がベチャベチャでサクサク感がないだけではなく、揚げ温度が低いからか肉の変な臭みも感じてしまった。塩だけで食べろと言われましたが、それは本当に美味しい肉を腕のある職人がカラッと揚げたトンカツ限定の食べ方のはず。

今や廃れ気味のフレンチの低温ローストを挙げるまでもなく、低温調理は食材本来の旨みを引き出すものではありません。火入れの失敗を激減させ食材の質の良し悪しを感じさせなくする手抜き調理のこの低温火入れ、トンカツ業界でも必要ない調理法であると考えます。