値上げしても予約困難度は高くなるばかり、くろぎ

1万円和食としてはCPが良いと評価されているからか、1/3の支払いであの京味(修業先)の料理が食べられると勘違いしている客が多いからか、湯島という立地でも現在東京で最も予約困難と言われている京風料理店。初めて訪問したのは一昨年の末でした。
1階にカウンター席が7席に小さなテーブルが2卓。2階にもテーブル席があるようで、店内は地元客などを中心に噂に違わず満席でありました。どこかの店(アロマフレスカ)のように、入店時刻を30分ごとにずらして過熱感を煽るような満席偽装はしていなかった。

当時は8800円のお任せコース1本。季節の食材として香箱蟹(雄の足も1本)や余市の鰤、大間の鮪が登場し、お椀が白味噌仕立てと京料理らしさも感じたこのコース。途中で和風タンシチューが出てきたのはご愛敬でしたが、本家の京味とは食材の質がまったく異なりながらもかなりCPが良いと感じたのです。
しかし主人の黒木氏。京味修業を食べログはじめネットが大きく取り上げていますが、年に数回は訪問する友里、まったく記憶にない顔でした。

オススメ本に取り上げようかと確認の訪問で電話をかけたのが昨年9月。驚いたことに3ヶ月先しか予約が入らないほど加熱しておりました。同時に1万2000円に値上げしたことを知り、私は嫌な予感がしたのです。人気で調子に乗って儲けに奔る性格の悪い料理人を多く見てきたからですが、果たしてどのような食後感の変化があるか、楽しみな再訪は1年前と同じ12月でありました。

コース内容にさほどの変化はなし。スタートのズワイは柴山港とブランド松葉蟹にアップグレード。胡麻豆腐などの先付けのあと、凌ぎとしてでた松輪の鯖の棒寿し、半生唐墨も悪くはなかった。
お椀は蔵王鴨のみぞれ椀。これまたまずまずの出来でしたが、食材のブランド化をすすめた結果が3000円ほどの値上げだったとわかったのです。
なぜかタンシチューはコースからはずれてお土産専門とレギュラー降格しておりましたが、〆の牡蠣ご飯まで値上げを考慮しても東京ではお買い得な京風料理と言えるでしょう。
客によって食材や調理法を変更するところは主人の柔軟性と取るか、客への区別(差別)ととるか。3ヶ月先に実際に訪問してみて判断してみてください。