昨年末で、一世を風靡したイタリアンが2店クローズとなりました。1つは昨年末取り上げたエノテーカ・ピンキオーリ。そしてもう1つがこの西麻布のダノイであります。
90年代のイタリアンブームの中、予約困難な店のハシリだったのがこのお店。
雨後の筍のよう増え続けたボナセーラ系イタリアン(何の必然性もない外人を雇用して「ボナセーラ」と雄叫びを上げさせて客の関心を引き、少しでも凡庸な料理からの目眩ましを狙った店)が多い中、郷土色のない日本アレンジながら人気を博したのが小野シェフであったのです。
当時は連日超満員で、物置と化していた小さなテーブルにも当時はカップルを座らせていたほどの過熱感がありました。姿を消した当時のマダムの素人然とした接客も人気があっただけにマイナスにはなっていなかった。
有名なスペシャリテ、キャベツとアンチョビのスパゲッティや地鶏とジャガイモのロースト(ローズマリー風味)に友里も当時は満足したものでした。
東京のイタリアンの実力が上がってきた90年代後半から徐々に人気が落ちたのは仕方がないとしても、大きな転機となったのは高輪の東武ホテルにファミレス並のキャパの支店を出した頃。
小野シェフは新店にへばり付いたため、この西麻布店のクオリティが劣化したのは言うまでもありません。何を血迷ったのか東京ミッドタウンへの出店(既に撤退)は更にダノイの体力を奪うことになったと私は考えます。
昨年12月、有名電通マン・佐藤尚之氏の自己陶酔ブログで年内閉店を知り、私は昼夜と最後の訪問をしたのです。
日曜の昼は閑古鳥。わずか2名の厨房スタッフが造るランチはサラダ、オイルベースのスパゲッティともイマイチ。これでは閉店もやむなしと次の土曜に最後の訪問をしたのですが、名残を惜しむ地元客なのか店内は8割方埋まっておりました。
オーダーしたのは当然前述したスペシャリテ2品。地鶏とジャガイモのローストはボリュームアップして3200円と高くなっておりましたが、20年前の当時を思い出し、懐かしかった。
今後は高輪と八王子の2店で頑張るとのホールスタッフの言でありましたが、支店を増やすとクオリティが劣化し客が減るという、友里定説を証明してくれたある意味貴重な店でありました。