これほど食後感が落ちていたとは、と村

拙著「ガチミシュラン」までは高く評価していた東京の京料理店「と村」。主人からは「京味」出身としか聞いておりませんでしたが、ミシュランではなんと京都で13年間修業を積んだとありました。どうやらその京都の店は「嵐山吉兆」のようですが、主人からは吉兆の「き」の字も聞かなかっただけに私は驚いたのです。
来春出版予定の友里征耶初の「オススメ本」に掲載するための確認で久々に訪問したのが今年の初夏。今までの訪問からオススメ掲載は鉄板のはずだったのですが、あまりの食後感の劣化に掲載を泣く泣く諦めることになったのです。

相変わらずバイト然とした女性スタッフは健在。主人の好みとはいえ和食はキャバクラではありません。年齢ではなくきめ細かい接客が第一であります。
昔は1万5000円からあったコースが現在は最安値で2万3000円に跳ね上がっております。高い3万円コースとの大きな違いは蒸し鮑が出るかどうかとの経験から、この日はこの最安値を頼みました。

まずは蛤の潮仕立て。初訪問で感嘆させられた一品でしたが、口に含んで味が濃すぎと判断し不安がよぎったのです。続く飯蒸しは渡り蟹の内子。おいおい、こんなに甘い味付けだったかよ、と心の中で叫んでしまった。
天然車海老の油くぐらしは立派な大きさ。茹でるより高温油にさっとくぐらせた方が旨みを逃がさないとのことでしたが中は半生の海老、まずまずながらこれが京料理とは思えません。半生のホタルイカも酒と塩だけで漬けこんだとのことですが、不自然な旨みに疑問。

焼き茄子(ウニ乗せ)は、甘すぎる田楽味噌が邪魔でわざわざはずして食べました。
そして再び海老の登場です。この店の名物という東京湾の赤座海老の塩茹で、赤座海老なら茹でても旨みが逃げないのかとの突っ込みはやめましたが、コースにデカい海老を2つも出す意味があるのかどうか。しかも京料理を看板にする店で。
鯛の造り、グジの焼き物もまったく傑出さを感じず最後の確認と追加で頼んだ鱧の焼き霜や筍も挽回するどころか評価を下げる一品となってしまったのです。

食材や調理が京料理と思えないものが多く紛れ込んでいる「と村」。極端に甘い味付けは、本場の京料理とはほど遠いものと判断し、オススメ店からはずすことになりました。