オープン直後とはいえ、雑誌に露出していたのにこの日の客は我々以外還暦男性が2名だけ。はやくもこの店の前途が思いやられた初訪問でありました。
西麻布で「ahill」という変わった店名の鉄板焼き屋がオープンしたのは7年前だったか。友里がすぐさま訪問したのは言うまでもありません。
ホテルの鉄板焼きと違って客単価は1万円以下と比較的気軽な店でしたが、食後感は価格なりで可もなく不可もなし。そんな店が銀座再開発ビルのベルビアに支店を出したと聞いて私はすぐに訪問したのです。
飲食店紹介雑誌はいい加減なもので、この支店を「あの西麻布の名店が銀座に進出」といったような大袈裟に取り上げていたからです。オープン直後に2回訪問し、西麻布店と同じ食後感しか持たなかったのですが、名刺をもらってオーナーシェフだと思っていた山下九氏が単なる雇われであることがわかったのが唯一の成果でありました。
その山下氏が独立して赤坂の僻地にオープンしたのがこのビストロQであります。
鉄板焼の職人がビストロとはいえフレンチ系の料理を提供ができるのか。不振のフレンチ界で唯一流行っているビストロに安直に飛びついたのではないか。ビストロ料理に目がない私はある程度期待して入店したのですが、一口食して期待が落胆へと変わったのです。
確かに鉄板はないけれど、6500円コースに出てくる料理はビストロにはほど遠いものばかり。鉄板焼コースに出てくるオマケ料理レベルなのです。
キノコのテリーヌは鶏をつなぎに使っているようですが、うまくつながっておらずボロボロ。鶏の味だけで肝心のキノコの存在感がありません。
焼き茄子のスープは茄子をガスで焼いたからかスープ自体がガス臭い。魚(たかべ)もポワレで思いっきり火が入っておりました。
1000円追加のA5級ヒレは炭火焼でしたが、トリュフオイルの匂いが強すぎ。ウリのフォアグラ入りハンバーグも、あらためて街場の洋食屋を見直す結果となりました。美味しくない。
グラスシャンパンはじめワインの値付けは安いけど、料理はビストロとはほど遠い、せいぜい鉄板焼きの延長戦上。とてもビストロ料理と胸を張れるレベルではありません。
ビストロを名乗るなら、フレンチの基本を再修業すべきと考えます。
第17回