東京和食の中ではレベルが高い大阪割烹、二戀

昨秋だったか西麻布4丁目を歩いていて、不審(失礼)な人物を見つけてしまった。似合わないデカイ枠のメガネにロン毛、そして独特の顔立ちを見て、リーマンショック後国内で仕事が無くなったといわれているインテリアデザイナーの森田恭通氏と判断するのに時間はかからなかった。
外でウロウロしてから彼が入った工事中の店舗は、昔「麻布食堂」があったところ。建て替えで「麻布食堂」が逃げてから長くテナントが決まらなかったのですが、森田氏のデザインで変な店がオープンするのだと私は予想したのです。

その店は和食だとわかり、年が明けて下見に訪問したのが2月。恵比寿の「ジョエル・ロブション」ほどノーセンスな内装ではありませんが、高級和食に必要な「凜」とした雰囲気はなく、ちょっと見ダイニング和食のノリか。席数はカウンター10席、青山のジュエリーウオッチ販売会社の娘さんの女将と雇われ板長が仕切る小さな和食店であります。

当時は1種しかなかった1万1000円コースを一口食べて、板長は東京ではなく関西(京都以外)で修業したと判断。結果は「喜川」出身と聞いて納得したのです。
京料理とは異なりやや味が濃いものの、付近の有名自己流創作和食屋(分とく山)とは格段の違いがある調理レベル。造り、お椀、八寸、焼き物(牛肉)、炊き込みご飯などコース価格を考えれば、東京の1万円和食の中では頭1つ抜けていると判断したのです。

ノリのよい女将に合わせてワインを頼んでしまうと支払い額は2万円台半ばに突入してしまいますが、適度な日本酒を選ぶなら1万円台半ばで終わるはずなので、アルコールのオーダーには注意が必要です。

数回訪問して最後に訪問したのは7月。1万5000円コースが堂々と誕生していたので嫌な予感がした通り、この時期高いコースでも鱧や鮎が出なかったのにがっかりしたのです。最近の京料理ブームで、東京の和食屋は夏に鱧や鮎を出すのが当たり前ということを知らなかったのか。そうは言っても味濃いだけの東京和食とは一線を画す料理。まずは安い1万1000円コースを試すことをオススメします。

午前中に付近を通ると、板長のBMWロードスターが店に横付けされているのを見ることが出来るかもしれません。