これまた立地による過大評価の典型例、モデスト

友里の定説の1つに「立地の妙による過大評価」と言うものがあります。
都心から離れた住宅街や地方でわざと回りより高額な設定の店をオープンすれば、実力と関係なく過大に評価されやすいというものであります。

わかりやすい例を挙げるとしたら、軽井沢の人気店「エルミタージュ・ドゥ・タムラ」でしょうか。西麻布の地で「ラフェドール」としてやっていた時はまったくの閑古鳥。ワインスクールと提携してオマケで生徒を釣るような営業もしておりました。
もちろん料理も全く凡庸。それが軽井沢へ移転しただけで「美味しい店」になってしまった。まわりのレベルが低いと言ってしまえばそれまでですが、こんな場所にこんな価格(客単価1万円以上)の店なのだから美味しいに違いない、といった素人心理を巧みに利用した戦術であります。
地方へ下って成功した例はありますが、逆の成功例がない事が、友里の定説を裏付けていると考えます。

この「リストランテ・モデスト」も、私が言うところの過大評価店。食べログでも高評価でありますが、あの「カノビアーノ」出身と聞くだけで多くの期待が出来ないのはすぐわかることです。この時期は強気でコースのみ。メインが信州和牛となる1万500円を選択しました。

スペシャリテだというアミューズは、リコッタチーズにオリーブオイル、そして直射日光にあてて25年熟成相当にしたバルサミコ添え。どうってことなく、25年物の本物バルサミコもそうは珍しくないだけに期待はずれ。
本鮪のカルパッチョは冷凍としか思えない生臭いもの。稚鮎のタリオリーニは唐墨パウダーのしょっぱさだけ。しかもパスタがオイルと乳化していなかった。
岩牡蠣と蕪のリゾットは塩が足りず肝心の牡蠣の味も出ていません。真鯛のソテーもイマイチで、信州和牛のヒレはグリルですが、生焼けで私には受け入れられない調理法でありました。

想像通りイタリア郷土色の欠片も感じないカノビアーノ式「創作イタリア風料理」。
東京では平凡なイタリアンと言いますか、ほとんど通用しないレベルと私は考えます。ワインは3000円以下から揃えているなど評価するところもありますが、如何せん腕と値付け(料理)が悪すぎる、立地の妙による過大評価の店であります。