ミシュランガイドの3つ星店訪問(全世界)をライフワークにしている方から「幸村」の誘いを受けたのが今年はじめ。最近ご無沙汰でしたが、彼には「花山椒」の時期限定ならばとの条件を出しました。
鮎や蟹、松茸など京料理の代表的食材の時期は訪問済みでしたが、ネットなどで評判の「花山椒鍋」というものを食べたことがなかった。
前首相鳩山さんの懐刀、松井前官房副長官と友達で、前首相のネット戦略のブレーンであると自慢する電通勤務の佐藤尚之氏(さとなお)も絶賛していた「幸村」の花山椒鍋。
4月中旬の予約を入れた3つ星ハンターの「幸村さん、標準語でしたよ」との言葉に私は驚いたのです。
幸村氏は東京出身で二十歳を超えてから京都へ修業に行った人。帰京後も京都弁を使うのは不自然だと私は問題提起してきたからです。今回の訪問は、花山椒鍋に加えて幸村氏のしゃべりの検証も大きな目的となりました。
相変わらず繁盛しているカウンターに座ってまずは幸村氏と客の会話に聞き耳を立てました。なんと幸村氏、標準語になっているではありませんか。
麻布十番に凱旋してからかなりの年数京都弁を使っていましたから、自然に戻ったのではなく、意識して無理な京都弁の使用をやめたのでしょうか。
とろみを付けた蛤の出汁を使った山菜の先付け、蛤自体が効いておりません。山葵菜と赤貝のお浸しも、青海苔の投入で貝の質がわかりにくい。
油目のお椀は4月なのに白味噌仕立て。出汁のレベルを見たかっただけに拍子抜けしました。琵琶湖の稚鮎も5匹と数は多かったけどそれほどのものを感じず、京都の筍は塩が足りなく旨みを感じなかった。
そして花山椒鍋の登場です。産地はミシュランの記述(丹波産)と違いごちゃごちゃとの花山椒、これを熱した甘い出汁に牛肉と一緒にくぐらして食べます。
私の拙い経験では、京都で出会ったことがなかった「花山椒鍋」、ネットで調べると京都の家庭料理でよく造られるようです。牛肉共々かなりの時間加熱された花山椒、肝心の香りや麻(痺れ)が飛んでしまっていないか。味醂を多用している甘い出汁も私にはミスマッチにしか感じませんでした。
調理が簡単で京都では家庭でも充分堪能できる「花山椒鍋」、数ヶ月前にわざわざ予約し、3万円払ってまで食べるほどのものではありません。