あの店は今・・・、堀兼

友里のデビュー作「シェフ、板長を斬る」で取り上げたのがお気に召さなかったのか、執拗に電話で抗議を受け続けたのが7年前。それまでは創作料理好きを連れて行くなどたまに利用していたのですが、すっかりご無沙汰となってしまったのです。久々に主人と旧交を温めることになったキッカケは、週刊文春の「麻布 かどわき」偽装告発記事でありました。

告発者から、堀内氏が私にコンタクトを取りたがっていると言われ、普段使用していない携帯の番号を教えたのが件の文春発売の数日後。話の内容は、「かどわき」の料理は他の店のパクリがほとんどといったネガティヴなものでありましたが、川島なお美氏と鎧塚俊彦氏の結婚披露宴で料理を造った(正確にはレシピの提供)スターシェフ達へのギャラをまとめ役であるシェフが独り占めして門脇氏が愚痴っていたといった面白いものもありました。後に川島なお美氏の事務所関係に問い合わせ「ギャラは払わずわずかなお車代を鎧塚氏が直接シェフ達に手渡した」と説明を受け、名指しされたシェフにも直接確認して、ガゼネタであったと確認したのです。
その堀内氏から「今度また店に来て下さい」との軽いジャブを打たれてしまった。逃げないことをウリにする友里、スルーする訳にいかず、「かどわき」訪問の数日前に7年ぶりに訪問したのです。

人気店だと思っていたのですが、週のはじめだからかカウンターは満席ではなく、個室に客は見当たりません。ウリだった納豆や大根おろしを巻いて食べるトロの造り、この日は炙ったトロがわずか3片、しかも大葉と海苔しか添え物がなかった。
ただし業界人が大好きな濃い味調理は健在。春野菜の煮浸しはホタルイカを入れて濃い味を更に補強、餡のかかった里芋と生ウニの湯葉包み揚げも味濃く、偶然なのか「かどわき」と重なった花山椒鍋は、肉と花山椒をなんとポン酢にくぐらして食べさせます。ポン酢と花山椒が私には合うとは思えなかった。適度にビールと日本酒を飲んでの支払いが2万円台後半は「かどわき」よりは安かったですが、食後感は似たり寄ったりか。
せっかくのお誘いだったのに主人が友里に気付いてくれたか心配になり、確認のため翌日電話をかけたら気付いてくれていなかった。再び味濃い創作料理店を再訪すべきか現在熟考中であります。