料亭でCPを期待してはいけない、岡崎つる家

皆様は料亭に何を求めるでしょうか。立派な建屋、仲居さん見事な接客、素晴らしい器、手入れされた庭などなど。でもその料亭に料理を期待するのは根本的に間違いです。
建屋の減価償却や維持費、仲居さんや下足番の人件費、高い器の購入とメンテ、庭の手入れと普通の店とは比較にならない出費をしなければ料亭は維持できません。普通の店には必要ない経費が多大にかかるわけですから、料理(食材や料理人)に投資する余裕は経営上あり得えないのです。ましてこの「岡崎つる家」のように、3?5万円コースという高額和食のコースと大差ない価格設定では、料理に力を入れてはビジネスモデルが成り立たないのです。「豪華料亭に美味いものなし」は定説であります。
いつも付き合ってくれる関西の食べ仲間から「今回は遠慮したい」との返事を貰い私はこの定説を確信したのですが、そこは駄目だとわかっていても飛び込むのが友里スタイル。もう一人の食べ仲間と東京からも一人誘って訪問したのは2月の半ばでありました。
週末に近い曜日でしたが、この日の客は我々だけ。さすが世界の賓客が訪問する料亭だと建屋の凄さに驚く私達が通されたのは、自慢の庭が正面に見える掘りごたつ式の部屋でありました。

まずは先付けとして葉付の三宝柑。車エビ、ホタテ、水前寺海苔、土筆、厚焼き玉子など具は多かったけどまったく凡庸。鯛の造りも脂臭くて養殖ではないかと思うほどの質。鮪も普通レベルでありました。お椀は粕汁。鰤、大根、人参、蒟蒻が入っていましたが、客単価4万円の店のお椀としてはいかがなものか。
揚げ物の油目唐揚げ、タラの芽、青唐もどうってことなく、春菊とササミの胡麻浸しが出てきたのにも驚きました。小料理屋へ来たんじゃないぞ。続くは名物の鯛頭山椒焼き。生臭く感じてまったく美味しくありません。筍ご飯だけは満足して〆となったのです。

夜だし時期が時期なので襖を開けっ放しにすることが出来ず自慢の庭を眺めながら料理を食べることができず、20%のサービス料が乗っての支払いが4万数千円。お酒を飲まない人でも3万8000円近くかかります。あまりのCP悪い凡庸な料理の連続に、友里が世界の賓客を税金で接待する身分にならない限り再訪はあり得ません。