立地の妙での過大評価の典型例、小松弥助

金沢市内で一番と言うより、「食べログ」で最高評価を得ている人気寿司店。
繁華街(片町)近くのAPAホテル内ということにまず驚き、実際の訪問でその外観に絶句しました。ガラス張りで雰囲気は喫茶店なのです。
主人が高齢だからか、遠方からの日帰り客が多いからか、この店は17時で店仕舞となります。12時のオープンと同時に10席のカウンターは月曜なのに予約客で即満席。再度私が驚いたのはそのうち6名が男性一人客でした。主人曰く、「東京の人が多い。あんたも東京だろう」と初っ端からカマされてしまった。

他の客が「握り」のお任せを頼む中ツマミからはじめた友里、「サビ抜き」をリクエストした隣客との会話で椅子から転げ落ちそうになりました。会社を休み東京から日帰りで来たという30歳前後の男性、年末に初訪問して感激し、間を置かず再訪したと言うので熱心な寿司好きだと思い愛想のつもりで「東京ではどこが好きですか」と聞いたその答えに驚愕。「寿司は好きではなく食べません。でもこの店の寿司だけ美味しく食べられるのです。」おいおい、寿司嫌いが好む寿司屋に俺はわざわざ来てしまったのか。この手の客に支えられただけの過大評価店なのかと後悔したのです。

評判の白子のすり流し、出汁が利きすぎで白子が埋没。蒸し鮑は深みのない味だけど前日の「あら輝」のフェアよりマシか。ヅケにコノワタを乗せてしまっては味濃すぎて肝心の鮪の風味を感じません。ヒラメも旨みを感じず、炙りトロは焦げ臭い。普段食べない甘エビは意外に美味しく感じました。

握りに移ってからも傑出さは見出せません。酢飯は味がしないとは言いませんがまったく特徴なし。ヒラメには梅肉、ヅケの小丼にはウニとトロロと大味好きな客を狙った手法にも疑問。ヅケもいやに旨みが強いなど、食材本来の旨みを引き出すのではなく旨みを加えるスタイルは、真の寿司好きには評価が別れると考えます。名物の「うなきゅう巻き」は鰻丼の味でしたし、ネギトロ巻きには見た目蛇腹の部位を使うなど、初心者向けの寿司屋と判断。光ものもなく、遠方から日帰りしてまで行く店ではない。ビールとぬる燗2本で1万円台半ばの支払いは、仕事のついでに寄ったから良いようなものの、わざわざ訪問する必要のない過大評価店と考えます。