創作と言うより「やり過ぎ」も目立つ、かどわき

2010年ミシュランガイドで3つ星昇格の情報が早くからネットを駆け巡っていた「麻布かどわき」。昇格を信じてミシュラン発売の直前に再訪した友里は、結果的に2つ星のままで肩すかしを食う羽目となりました。
久々にこの店のコース料理を食べての感想は、やり過ぎ調理も目立つが以前より良くなったのではないか。少なくとも皿の上だけの評価なら、3つ星に昇格した青山の「えさき」より上です。

予約は2週間前でも簡単に入りましたが、当日の店内は満席。いや2回転している席もある繁盛店であります。
まずは銀杏の後、菊菜とトンブリのお浸し。ちょっと味濃いけどまずまずのスタート。スッポンの湯葉揚げはちょっと臭みを感じてイマイチ。造りは隣客とは違うフグ刺しでありました。厚めに引いたというこのフグ刺しに、カワハギの肝を溶いたポン酢が添えられます。
カワハギの肝自体が酒飲みにはたまりませんからこれは掟破りか。当然美味しく感じるのですが、肝心のフグの味わいが記憶に残らなかった。個性派脇役に食われたルックスだけの主演男優と同じ。

脇役の活躍はまだまだ続きます。柳鰈の焼き物に添えられたのはカツオの酒盗に鮎の白子。個性溢れる添え物の旨みのお陰で、柳鰈の存在がまたまた希薄になりました。この脇役なら魚は何だっていいのではないか。定番のウニと蟹の茶碗蒸しにはイカ墨のシャーベットがかかっています。和食でここまでやるものなのか。鰤しゃぶにはゴマ油に塩と山葵を混ぜてたっぷり付けて食べるよう勧められます。鰤も完全に主役を奪われており、ショッパイゴマ油の味が口中に広がりました。
まずまず良かった松茸の焼き物の後、ネットで大評判の「黒トリュフご飯」の登場です。この時期にしてはやけに香りが強い黒トリュフ。ツンと来る人工的な匂いとご飯の不自然な照りを見た連れの料理店関係者はすぐに「黒トリュフオイル使用」と見破ったようです。

高級食材が目白押しのコースで酒類を入れての支払いは2万円台半ば。インパクトある料理の連続で、クラシックな京料理に拘らない人には美味しく感じる門脇劇場。創作料理が避けて通れない「やり過ぎ」に到達してしまった感もありますが、業界人や文化人には大ウケする料理であることは間違いありません。