予想通り家庭料理の延長線上の店だった、もめん

ミシュランの度重なる説得にも首を縦に振らず掲載拒否を貫いた2つ星和食店。「瓢亭」のように最終的に尻尾を振って取材協力していたら、ミシュランは3つ星を献上していたはずと言われている、3ヵ月先まで予約一杯の人気店であります。
居酒屋地帯ですが外観・内装とも小綺麗にまとめており意外感を造りだしています。こんなところに高額和食(大阪として)があるのかと客を「立地の妙」のトラップに嵌めさせ、過大評価に誘導する高度な戦術です。
この店の料理(1万5000円コースのみ)を一言で評するならば「家庭料理の延長線上」。無理すれば素人(一般家庭)でも入手が可能と思われる質の食材を使った、素人よりやや上のレベルの調理で供する料理という意味であります。

月毎に替わる料理、まずは揚げ物からスタートです。銀杏は火入れが緩くアスパラは太いけど焦げすぎ。衣の味が強すぎるし、バチコをわざわざ揚げる必要があるのか。無造作に皿に酢飯を固めその上にウニを乗せた寿司もどきも、酢飯が甘過ぎでウニの質も普通レベルでありました。
お椀は海老真丈と言われましたが、食べてビックリ。大きい椀タネ(真丈)の中に海老がそのまま入っているではありませんか。海老だと直ぐわかってもらえる為との説明でしたが、それは「丸ごとでないと海老を使っているとわからない常連客が多い」という意味なのか。出汁は予想通りインパクトを重視する単純な味わい。京都の高額店で通用するとは思えません。造りの明石産ヒラメは脂臭く旨みも乏しい。主人の包丁仕事もイマイチで切り身も美しくない。特に縁側は客に出すレベルではなかったと考えます。
煮物の源助大根。得意の濃い味出汁がしみ込んで本日一番の料理でありました。白グジの焼き物もどうってことなく、量だけは多かった蒸し寿司とデザートの柿とラフランスでお腹だけは一杯になりました。

ワインなど酒類の持ち込みは無料で、支払いは1万5000円ぴったり。一般家庭でこの料理が出たら美味しいと私も絶賛するでしょうが、この支払いでは食材や調理技術に満足できません。主人が取材拒否をしなかったらミシュランは3つ星を献上していたかもしれませんから、友里的には主人の判断だけは素晴らしかったと評価します。