大阪から東京への移転はあまりに無謀、鮨 嘉瑞

立地の妙と熱心な信奉者で人気鮨店となった上野毛の「あら輝」。主人の荒木水都広氏は、女性ヨイショライターと共著本を著して有名ホテルで盛大な出版パーティを開いただけではなく、公表している「水都広」という名も当て字という自己顕示欲旺盛な鮨職人。その荒木氏を師匠と仰ぎ、月に一回は上野毛の店に通う主人の店がこの「鮨 嘉瑞」であります。

荒木氏は何を勘違いしたのか近々銀座へ移転するそうで、原状回復する手間と費用を避けたいからか1際年下のこの弟子を上野毛の店へ移転させると聞き、すぐさま訪問したのが今年の半ばでありました。中野坂上で人気だった「さわ田」や茨城から来た「やまいち」の銀座での苦戦や閉店を持ち出す迄もなく、その地にあってこそ立地の妙からの過大評価で客が来るというもの。東京の鮨屋が銀座へ移転しても成功するのは至難の業だというのに、大阪の寿司屋が東京へ簡単に出て来てうまくいくのか。確認のため訪問した私は、非常に厳しいと判断しました。

ツマミと握りのお任せコース。まずは豊後の鯛に旨みではない脂臭さを感じてスタート。ヒラマサも普通、勝浦産というカツオも味が薄く醤油負けしています。トリガイも前日食べた「宮葉」と比べるのが可哀想。シマアジに至ってはガスで炙り出しましたから驚きです。由良のウニもイマイチ、出来たてなのか温かい蒸し鮑も旨みが薄かった。

握りもダメ。赤酢使用かと思うほど色が濃い酢飯は単にショッパイだけ。鮪に合わせた酢飯とのことでしたが、2ヶ出てきた肝心の鮪も赤身、中トロ、蛇腹と東京の有名店の質にはほど遠い。主人は鮪が好きなようですが、東京の高額店は鮪だけでは勝負できません。
アサリや太刀魚の焼寿司といった変わり種も不発、穴子もガス臭く、なぜ干瓢巻に穴子を入れるのか理解不能でありました。酢飯がしょっぱすぎ、煮切りが濃すぎる割に、肝心のタネの旨みが薄い。生姜も私には酸っぱすぎです。酢飯と煮切りが好みに合わずお酒がすすまなかったのですが支払いが1万7000円前後。東京へ移転したら2万円を超える請求になるのではないか。

私は荒木氏に「この主人の寿司を本当に食べて東京移転を勧めたのか」と問いたい。自身の銀座移転と共に結果ははじめから見えていると考えます。