3つ星フレンチ「カンテサンス」などを擁する多店舗展開会社「グラナダ」が運営する「キオラ」グループの総料理長だった鵜野秀樹氏。2年前に白金のイタリアン「ボスケッタ」のオーナーシェフに就任したとマスコミが発信していましが、今年再びオーナーシェフとなり独立してオープンしたのが麻布十番の「イル・マンジャーレ」です。
オーナーが独立?実は前店「ボスケッタ」はガラス食器販売会社が経営していて鵜野氏はただの雇われだったのです。今回は本当に独立なのかとこの店を訪問した友里ですが、再び「オーナー疑惑」を感じてしまいました。
場所はユニマットビル6階。ホールは大箱で天井からは変なカーテンが垂れており、テーブル、グラス、カトラリーは安っぽい。一番の違和感は男性スタッフ2名。慇懃無礼な接客だけではなく外観はどうみてもやっと独立したオーナーシェフの店に勤務するカメリエーレに見えません。ちょっと見ホスト風。そういえばこのビルの階上には、アマンリゾートを目指す過剰サービスがウリなだけのレストラン「カシータ」系列の店が3フロアありました。カーテン幕ふくめて内装はバリ風で、客も真の外食好きには見えない若い客が多いのも不思議。本当にオーナーシェフの店なのでしょうか。
鵜野氏はいつの間にか集客力を磨いたようで、「ボスケッタ」時代と比べて客はほとんど満席。この店の料理を一言で表せば「シェフの個性を抑えた無難な料理」。イタリア郷土色を隠し、野菜を多く使った量の多い万人向けの日本アレンジイタリアンと言えるでしょう。
バーニャカウダ、シーザーサラダとも野菜の量は多いのですが、肝心の味にキレがない。パスタ類も具の量はたっぷりあるのですが、生ポルチーニ、イカスミなど記録はあるけど良い意味でも悪い意味でも印象に残らない料理が続きます。メインの肉料理もそれなりでした。
厨房スタッフはバスボーイ入れて6名と大所帯なのですが、それぞれが自分の担当を黙々とこなしているだけで、オーナーシェフの店に見られる「緊張感」やシェフの「存在感」を全く感じない「イル・マンジャーレ」。「キオラ」時代は好きだった鵜野氏には、もっと「オーナー色」を出した店を再独立してオープンすることを期待しております。